授業は滞りなく終了。よって、放課後である。
「ほら、委員長会議に行くわよ」
ああ。
会議室まで連れ立って歩く。白い息を吐きながら、未だにはっきりしない過去の出来事を振り返りながら記憶を整理している。
隣を歩いている朝倉涼子と付き合い始めたのは、ある放課後の夕日に染まった教室。「放課後誰も居なくなった一年五組の教室に来て」と書かれたメモ用紙に呼び出された俺は、朝倉から好きだと告白された。正直、驚いたものだがあの美人と付き合えるということを考えると拒否する必要なんかないだろ?もちろんOKして、高校生らしい青春を謳歌することとなった。
ちなみに、その後「忘れ物賛歌」を歌いながら教室に入ってきた谷口にばっちりとその光景を見られ、次の日には谷口がそのとこを言いふらし、朝倉が全く否定もしなかったため、まぁ別に否定する必要ないわけだが…なんとなくこう恥ずかしいだろ?まぁそういう経緯によって、めでたくというかなんというか、学年、いや学校公認?の仲になった。もちろん、最初は朝倉狙いの男子から下駄箱に随分といたずらの手紙が書かれたものだが、本当に行動力があるというものは怖いもので、朝のHRのときに「そういうことやめなさい」と一言、それからぴたーっと音沙汰なしさ。ちなみに告白されたとき、俺のどこを好きになったのか聞いてみたところ「自然体なところが良かった」と。釈然としないが、まぁ好かれることに越したことはない。
そうそう、ここに居る理由も忘れていた。いつの間に俺が委員長になったんだ、と思ったがそういや最初のLHRで決まったんだったな。委員長の立候補・推薦で、女子は朝倉はすんなり決まったのだが、男子の方が決まらない。手が上がらない、のではなく、当然朝倉目当ての男共が朝・夕の通勤ラッシュがごとく手を上げるもんだから、担任の岡部は苦虫を噛み潰した顔で決められずにいた。
俺は無視を決め込んでいたんだが、国木田の馬鹿が俺を推薦するもんだから結局俺もその委員長争奪というか朝倉争奪戦に入らなきゃいけなくなった。この頃はまだ朝倉とは付き合っていなかったから、別に委員長とかなる気なんぞさらさらなかったんだが…。
しかし…、なんだ、不思議なもんだな。勝敗を決定するにはやはりじゃんけんだ、という誰かの言葉により「委員長争奪じゃんけん大会」が行われ、面倒だから適当にグーしか出さなかった俺がなぜか優勝した。つーわけで、こういう状況になっているわけだ。
「とにかく時間がもったいないし、早く済ませちゃいましょ。後でゆっくり買い物行きたいし」
夏休み前の短縮授業のため、確か教室を出た時がまだ12時過ぎだった。確かにさっさと済ませてゆっくり飯でも食いたいな。

「にしてもさすが朝倉だな」
「そんなことないわ」
昼のファストフード店内。向かい合わせに座った席で、朝倉はポテトをちまちまと食べながら笑う。
正直委員長会議とやらはとにかくだるかった。
全委員長の自己紹介と全校集会での並び順、点呼報告の仕方等正直俺としてはどうでもいいことばかりを決めていくのだが、これがものすごく遅い。担当の教師が気が弱いせいかはたまた生徒たちの協調性がなさすぎるのか、なかなかまとまらない。こりゃ2時間くらいはかかるな、と思っていたが…。
片っ端から「私がやります」「私が説明します」と朝倉がバンバン手を上げ、声を出し、プリントを配り…。最終的には全委員長の統括までまかされ、教師の立場は無くなっていた。…どうでもいいことだが、朝倉。なんで俺までその統括に回らなきゃいけなくなってるんだ。
「あら、だって二人の方が楽しいじゃない♪」
…まぁいいか。
以上が委員長集会の概要。結局予想より遥かに短い30分ちょっとで終わった。これも朝倉のお陰だな。
「…正直言うとね、早く帰りたかったから手短に進めたかったの。時間も有限なんだしね」
くすくすと笑う。とはいえ、いろんな仕事をやらなきゃいけなくなるんだから、後々大変だろ?
「大丈夫よ、二人でやればすぐに終わるわ」
…つまり、俺を巻き込むことは決定事項ですか。
「もちろん♪」
まぁ、朝倉と一緒なら俺の仕事なんかせいぜい荷物もちとかくらいだろう。力仕事で活躍させてもらうさ。
「期待してる。あ、もう口の端にケチャップなんかつけて…はい、取れた」
バーガーを食べたときに付いたであろうケチャップを紙ナプキンで拭う朝倉。かなり恥ずかしいぞ。
「あら、ケチャップつけたまま歩く方が恥ずかしいわ。拭くは一時の恥、拭かぬは一生の恥、ってね」
またくすくすと笑う。まぁ、面倒なことは後で考えよう。今考えたって何も始まりはしないんだからな。
「…ん?」
今、店の外を見知った人が通った気がした。誰だ…?
「なぁに?外見つめて。あ、もしかして女の子見てたとか?」
いや、そういうわけじゃないんだが。
むすっ、とした顔を向ける朝倉。ここは話をそらしておこう。
「そういえば、今日買う店とかはもう決めてるのか?」
「あ、うん、一応は。でも他のお店も回りたいし」
ふぅ、なんとか話はそらせ、
「さてと、そろそろ行こっか。今日はキョン君のおごりだからね。他の女の子見てたバツとして、ね」
てねぇ!