レジの支払いを済ませた俺は一足先に外に出ていた朝倉に追いつく。吐く息が少し白い。正直寒いから早くしてもらいたい。
「んで、どこに行くんだ?」
「んーっと、まずはもう決まってるものから買いましょ。こっちよ」
といって手を引く朝倉。朝倉の手は温かいな…と考えていると、顔に似合わずかなりの力でひっぱるもんだから、思わず雑踏の中ですれ違う人すれ違う人にぶつかる。いてっ、うおっと、すみません。
「わ、分かったから手を引っ張るな」
どうにか体勢を整えて、朝倉の横に並んで商店街を歩く。あと数ヶ月も経たない内にクリスマスだ。と、思っていたら既にちらほらとクリスマスリースや「メリークリスマス」なんて文字の電飾などが飾ってあったりするから、商店街とは時間がいつも先へ進んでるんじゃないかと思うね。
「あ、ここよ」
足を止めて店を見上げる朝倉。思ったより近かったな。
「帰りにたまたま寄って見つけたところだからね」
店の中に入っていく朝倉についていくと、なにやらうさんくさそうな仮面やら帽子やらアクセサリーが並んでいる。…なんというか非常に怖い。こんなところに乙女心をくすぐるようなものが存在するようには見えないぞ。いや、乙女心というのは良く分からないものだし、そもそも朝倉の趣味からしてどんなものがいいとかそういやよく知ら、
「あった、これよ」
笑顔で差し出されたそれは、素人目に見ても明らかに高そうなネックレスだった。きらびやかな宝石がちりばめられ、チェーンはいぶし銀のように鈍い光沢がある。
…って、ちょっと待て。どう見ても高いぞ、これ。
「と、私も思ったんだけどそうでもないの。ほら、値段見て」
値札を見る。
\2,000-。
マジか。実は色が付いてるのはガラスで、チェーンも鉄だったりするのかもしれないな。素人の目にはさっぱり分からん。まぁ、店が既に怪しいし偽物でも何の不思議もないな。いいんじゃないか?
「でしょう?それに丁度二つだけだし、ね?」
そうだな。ああ、俺が払おう。
「ううん、私が欲しいだけだから私が買うわ。これからかなり買い物に付き合ってもらわなきゃいけないしね」
ぱちりとウインクをする朝倉。まぁ、朝倉がそれでいいならいいんだが…。ん?この店員も何か見たことがあるような…。今日は特にデジャヴだったか?というのが多いな。あまり深く考えないようにしよう。きっと、町ですれ違ったことがある、それだけだ。
店員さんの「ありがとうございましたー」という声を背に二人で店を出る。すぐに袋からネックレスを取り出す朝倉。
「つけてくれる?」
ああ、いいぜ。
朝倉から受け取ったペンダントを首にかけてやる。少しシャンプーの香りに混じって朝倉の匂いがしたが、別になんとも思ってないぞ、うん。あ、いや、なんとも思ってなくは無いが、やましい気持ちになったわけじゃないとそれだけは弁解しておく。断じて抱きしめたい、だとかそういう気持ちになったわけじゃないぞ!
「どうしたの?」
いや、なんでもない。
「そう?それならいいけど。じゃあ今度は私が掛けてあげるね」
身長が10cmほど違うから少し屈む。また…いや、なんでもない。
「うふふ、おそろいだね」
そうだな。でも学校にはつけて行けないし、普段はあまり付けないからな。
「そうね…それはちょっと寂しいわね…。あ、なら校則を緩和してもらえばいいんじゃないかしら?外から見えないようなアクセサリは罰則の対象外にしてもらうとかね」
いや、さすがにそれは無理だろう。それに、外から見えないアクセサリってかなり限定されるだろう。
「腕輪なんかも長袖だったら袖の中に隠せばいいし、このネックレスみたいに首にかけるものは制服の外から見えないようにチェーンの長さを調節すればいいじゃない。そうしたらかなりアクセサリをつけられる幅も広がるわ。外に見えないから、風紀の乱れだということも教師は言うことができないし、生徒としても堂々とアクセサリをつけることができるわ。それなら問題ないと思わない?」
うーん…だったらこっそりつけておけばいいんじゃないのか?
「それはだめ。あくまでも校則は校則よ、守らなきゃいけないわ。それに、見つかったら没収されちゃうじゃない。そんなのは嫌だわ」
ああ、そうだな。せっかく二人だけのペンダントなんだしな。
「二人だけのなんて…もう、恥ずかしい」
頬を赤らめ体をくねらせる朝倉。ん?よく考えてみれば…もしかしてものすごい恥ずかしいことを言ったんじゃないだろうか。というか、滅茶苦茶恥ずかしいこと言ってるじゃねーか!
「でも、本当にそうよ。二人だけのペンダントなんだから、他の人に一時的とはいえ渡さなきゃいけないのは嫌じゃない?だから先生に掛け合って、承諾してもらうの」
笑顔で言う朝倉。これがただの優等生じゃない朝倉の良さで、人を惹きつける魅力なんだろうな。
「あ、もうこんな時間!まだまだ回らなきゃいけないところはいっぱいあるから、早く行きましょ!」
といって、またもや朝倉は俺の手を引っ張り、待ってくれ、ちゃんと歩くから!