昨日エベレスト登山中だったハルヒのテンションは、どうやら本日に至っては静止衛星上でも漂っているらしく、昨日以上にハイテンションに輪をかけている。
 入り口では、朝比奈さん・鶴屋さんコンビが参加者名簿に名前を書いてもらい、参加用バッジを手渡し、古泉や実希、朝倉は参加者に皿や箸を配り、何処に何があるかなどの説明をしていた。バッジは、一昨日の準備でハルヒが作ったものらしいが、折り紙で作った花のバッジで、割と凝っていたな。
 俺の仕事は、何処かに不備がないか大まかな確認をする役。今回は、割と楽な仕事に割り当てられたものだ。
「有希、有希?あ、キョン。有希知らない?」
 そんな中、ハルヒは、既に参加者が集まり始めている中をかいくぐり、俺を見つけるや否やそう尋ねた。
「いや、俺はまだ見てないぞ。実希と朝倉は来てるし、きっと何処かに居るんだと思うが」
「今回くらいは、有希に音頭取らせようと思ったのに」
 いつも通り、お前がやっちまえばいいじゃないか。
「そうもいかないわよ。有希が組長だし、こういう節目のときくらいは組長にやらせるべきなの」
 変なところにこだわりを持っているやつだ。
「とにかく、有希見つけたら教室に来るように言って!あたしは他の教室と廊下探してくるから!」
 分かった。
 ハルヒはSON組総本部から飛び出して、長門を探しに行った。
 って、よく考えたら、朝倉達に聞けばいいんじゃないのか。一緒に来たんだろうから、あいつらが知ってるだろう。
「実希、朝倉。長門を知らないか?」
「長門さん?そう言えば、こっちに来てから見てないわね」
「お姉ちゃんですか。見てません」
 割と淡白な奴らだった。
「一緒に来たのは来たんですけどね。多分、お手洗いじゃないですか?」
 辺りを探してくる。長門が戻ってきたら、ここで待機するように言ってくれ。
「早く帰ってきてくださいよ。開始は3時からなんですから」
 それは長門が見つかった時に、長門に言ってくれ。俺のせいでも、ハルヒのせいでもないからな。
 とりあえず、ハルヒが教室棟を探しているらしいので、俺は部室棟を探す。
 1階、2階の廊下を見る限りは居ないな。何処に行ったのやら。
 教室棟に戻ろうとすると、先ほどまで居なかった長門が、渡り廊下で何故か空を見上げている状態で静止しているのを発見。
「長門、何をしている」
「……?」
 小首を傾げる。
 あー、まあいい。とにかく、もうすぐ始まるから、行くぞ。
「?」
 俺に引っ張られている間、ずっと疑問符を頭に飛ばしっぱなしの長門だったが、途中でハルヒに会い、
「あ、有希。何してたのよ。今日は有希が音頭取らなきゃだめでしょ」
「音頭?」
「式とかやるときに、最初に「乾杯」ってやるやつよ。昨日あたしがしたでしょ」
 などと言いながら、3人駆け足で階段を上り、パーティー会場へやってくる。SON組メンバー含め、20人以上が教室に既に集まっていた。全員という割には、少ないような気がしなくはないが、まあSON組に関係した人といえば、割と多いくらいな気もする。
 一応、名簿役の朝比奈さんに確認を取る。呼んだ人は全員来ました?
「あ、はい。先ほど確認した数では、涼宮さんとキョン君、長門さんを除いて全員揃ってます」
「じゃあ、始めましょ」
 ハルヒが長門を連れて、黒板前の教壇に立つ。俺はその2人が正面から見える場所に移動し、
「あ、キョンくん。どこいってたのー?」
 招待客に紛れていた妹と出くわした。頭にシャミまで乗っけて、
「って、ネコはいかんだろ、ネコは」
「だって、シャミもつれてきてあげないとかわいそうだもん」
 だもん、でも、ざぼん、でも、でこぽーん、でも駄目です。
「まあまあ、もう会は始まってしまうし、いいんじゃないかね」
 誰かと思って振り向くと、あの時の校長だった。
 ご無沙汰しています。
「設立100日目、おめでとう」
 ありがとうございます。と、言っても、1年とか2年経ったわけでもないんで、ここまで盛大にやるほどのことでもない気がするんですが。本来は、部活とかに昇進したときに祝うものだと思います。
「はっはっは。まあ、そういう考え方もあるね。しかし、部活でもないのに、たった100日間でいろいろな功績を残したのはすごいことだよ」
 まあ、それはそうですが。
「あのお嬢さんなら、すぐに部活動にもなるんじゃないかね。じゃあ、また」
 はい、それでは。
 校長は笑顔でそう言って他の参加者の輪に入っていった。よく見ると、PTAなんかも居る様子で、なんだか大事になってるような気がしなくもない。
 そうこうしている内に、壇上に立っていたハルヒと長門が、というかなんだかんだでハルヒが一方的に何か喋っていたわけだが、乾杯の音頭に入る。
「それでは、乾杯の音頭を我がSON組の組長、長門有希さんにやってもらいます。ほら、有希」
「……?」
「コップを上げて、乾杯、でいいのよ」
「……乾杯」
 淡々と言われた通りに音頭を取った長門に続けて、皆が乾杯と声を上げた。俺も、近くに居た新川さん達と乾杯し、ジュースを飲む。昨日炭酸地獄だったため、今日は喉に良さそうなりんごジュースだ。
 もちろん、朝倉には炭酸が行かないように皆気をつけていたようだ。あれは、いろいろとまずいからな。

 特に何事か企画していたわけでもなかったらしく、滞りなくパーティーは続き、日が落ちる前までに無事「SON組100日記念パーティー」は終了した。
 せっかくなんだから、ビンゴゲームでもやれば良かった気もするが、何か問題が起こるよりは、マシだったのかもしれんな。
 参加者を全員送り出すと、後に残っているのは片付けである。ゴミを分別しつつ、かき集めていくと、窓際でまた空を眺め、ぼーっとしている長門にぶつかりそうになった。
「長門、手伝ってくれ」
「……?」
 今日はやけに疑問符が多いインターフェースである。
「このゴミをだな、」
「貴方は誰?」
 静止、せざるを得なかった。