「その後って何したんだっけ?」
 ハルヒの言葉に一同、首を傾げる。
 大きなことは素直に言って既に挙げたものくらいしかやってないような気がする。つーか隕石が落ちたとか言ってたあの世界とゲーム世界に行ってたときが長すぎてそれ以外に覚えがほとんどないと言った方が正しい。
「もうプールに行ったことくらいでしょうか?」
「そんなに飛んじゃう? おっかしいなあ。今年、あまりに出来事が少なすぎるわよ。歴史の教科書ではせいぜい数ページで終わっちゃう程度ね。これは由々しき問題だわ! でも確かに思い返すとあまり大きなことやってないかも。あ、夏にも海まで行ったっけ。あのホテル、結構良かったわ。キョンがくじ引きで引いてきたとか言ってたのよね。たまにはキョンも役に立つじゃない」
 たまにかよ。普段あれだけ雑用とか使いっぱしりさせておいてこの言い草は無いと思うぜ。
 それはさておき個人的には今年くらい普段が平凡ならありがたい。こいつの気づかない間に遭ったことも含めれば、俺にとっては今年はこれっぽっちも平凡では無かったし、これ以上悩みの種を増やさないで欲しいね。
「他には七夕を2回お祝いしましたよね」
「今年だけだっけ?」
「えーっと……多分、そうだと思います」
「そっか。んー、他には……プール行くようになる前にほら、地上絵書いたわよね」
「書いたのは俺と古泉だ」
「発案者はあたしなんだから書いたって言ってもおかしくないわ。映画だって出演者の名前は出てくるけど、最後には監督の名前が出て来るでしょ。で、宣伝なんかでは何々監督作品って感じで呼ばれることも多いし」
 有名な監督の作品だったらそうだが、あれは芸術作品でもなんでもないだろう。
「何言ってるのよ。あれは十分に芸術作品の1つだわ。それにあたしはこれから有名になるの。来年にはあの題材での映画も控えてるし」
「あれか」
 できれば一生お蔵入りにしておいて貰いたい。あれだったら『朝比奈ミクルの冒険』の続編を作った方がよっぽど……いや、どっちもどっちだよな。
 朝倉が自分の鳥皿に鶏肉の切り身を移しながら尋ねる。
「そういえば涼宮さん」
「何?」
「もし映画で学校を題材にするなら、学校内で撮影が必要になるわよね? もし使いたい場所があれば言ってね。前、朝比奈さんが題材の『朝比奈ミクルの冒険』? とかいうのを撮ったときに教師に怒られたって長門さんから聞いたし、そういうのでいちいち撮影が中断されないように早めに手を打っておこうかなって」
「なるほど、それは名案ね。屋上で花火使ったときには教師たちがすっ飛んで撮影中断しなきゃいけなかったから面倒だったわ。まだストーリーも決めて無いからどうなるか分からないけど、学園モノになるからやっぱり教室とか使わなきゃいけないだろうし、必要になったらお願いするわね」
 頷き返す朝倉を見ながら俺はSON組はSOS団から比べると一気に健全化したなあなんてことを思った。少なくとも学校のものを勝手に私物化しないようにまず学校へ連絡を入れるようになったし、何か必要になれば朝倉を通じて学校側に働きかけて借りるなんてことも多くなった。せっかくだからついでに部活内容も高校生らしいことを率先してやってくれればいいのだが、残念ながらそちらの方についてはハルヒが自重してくれそうにないのでこの先も期待は出来そうに無い。
「で、他には……何したっけ?」
「久しぶりに焼き芋パーティーしましたね」
 実希がお茶を啜りながら答える。
「うんうん。あの芋おいしかったわよね。鶴屋さんいつもありがとう」
「構わないっさ。ああいうのは皆で食べた方がおいしいしねっ」
 鶴屋家は謎に包まれているな。その内、どんなところなのか知る機会があったりするんだろうか。
「そういえばうちのクラス、テスト用紙が無くなったってこともあったわね」
 下足箱の上に置いてあった鞄の中に入ってた、ってやつか。あったな。あのテストの結果は今までの数学のテストの中で1番マシだった気がする。その前に嫌ってほど対策させられたしな。
「なんだかんだ言って結構いろいろやってるじゃない。安心したわ」
 毎年から比べれば比較的易しい気はするが、それでもハルヒが言うように思ったよりはいろいろやっていた。ハルヒもこれくらいやってると分かれば満足だろう。
 なんて今年1年を思い出しつつ、鍋パーティーは終了。多分年末にもまた同じように思い出話なんかするんだろうが、それはそれでまあいいんじゃないのかね。過去を振り返ってばかりではちょっと年寄り臭いかもしれないけどさ。


「さて……それじゃあ反省会2次会でもやるとするか」
「そうですね」
 長門家に集まったのはハルヒを除くSON組の面々。このメンバーが集まるときにはハルヒを含めては話し辛い、話せない話題が出されるときである。長門家にもこたつが導入されており、部室に居たときとさほど変わらない配置で座っている。
「今年はどちらかといえば涼宮さん関連よりもそれ以外の問題の方が多かったですね」
「ああ。特にあの隕石事件は酷かった」
「あのときはさすがに私も焦ったもの。まさかあんなにあっさり、あんな形で囚われるとは思わなかったわ」
 朝倉も溜め息を吐いて答える。
「そういえばあの空白のメールを受け取ったときのそっちの様子ってのはどんなのだったんだ?」
「この前に連れて行ってもらったけど、表現するなら閉鎖空間が非常に近いわね。ただしあんなに真っ暗じゃないわ。普段と全く同じように電灯も付いてるし、ネオンサインも遠くから見えたし。違ったことといえば音が突然消えたことと、途中にある見えない障壁に遮られてそれ以上進めなくなることかしら」
 聞いている限りでは確かに閉鎖空間に似ている感じはするな。