連れてこられたのは、12畳くらいはありそうな畳敷きの部屋。庭まで直接出れるように、縁側もあって、たまに鹿威しの音まで聞こえてくる。こりゃ、純日本庭園とかいうやつじゃないか?
「それで、会ってもらいたい人、というのは?」
屋根の上で随分話し込んでいたようだったが、その辺りまでは話が進んでいるらしい。まあ、1つ問題なのは、
「えー、まずその前に……」
「はい?」
「日野正治さんですか?」
「はい」
あまり嫌味のない笑顔をこちらに向けてくる。この御仁が噂の、か。
とりあえず、第1関門突破。
「次に、ですね」
ここが勝負どころだ。
「ある女性が、あなたに会いたいと言っているんですが」
「女性……ですか?」
「ええ、まあ」
なんかまずいんだろうか。
「深山、静香さんという方をご存知ですか?」
「深山さん……?」
首をひねり、数秒の後。
「いや、名前だけでは良く覚えていませんね」
そりゃそうか。特に仲良くしていた訳でもないみたいだったしな。
「僕、実は人の名前を覚えるのが苦手で。歴史はまだいいんです。でも、人付き合いになると途端にダメになるんですね」
そりゃまた珍しい特殊能力を持ったもんだ。
「勉強の一環と言われれば覚えられるみたいなんですよ」
勉強と名の付くも