「長門はどう思う?」
「不明。元のイベントとしては組み込んでいない。おそらくこちらの世界で起こったバグ的イベント。この世界を終わらせるにはおそらくクリアが必須」
となるとどっちにしても無視はできないってことか。分かってはいたが、まあやっぱりクリアするしかないんだな。
プチ会議が終了して振り返った俺は1つ咳払いをしてから答えた。
「どこまで出来るかは分からんが、できるだけやってはみよう」
おそらくこれが模範解答だろうな。それ以上に最適な答えを俺は今持ち合わせていない。
「だが、期限や確約はできないぞ」
「もちろんそれで構わない。いつか助けてやってくれ」
「ああ」
安請け合いだとは思うが、こうでもしないと話はきっと進まないだろうし。
「ところで……」
「どうしたんだい?」
「少し聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「もちろん。君たちが信じてくれるというのなら、僕たちも信じよう」
腰を落ち着けて、俺を見る。
「この辺りに館って無いか?」
「館? というと大きな建物のことか?」
「建物といえば建物だが、外側が黒っぽくて窓が多い建物だな。後、他とは明らかに雰囲気が違うな」
実に説明しづらいが、何となく分かってくれているらしい。
「教えるのは構わないが、まずは休息を取った方がいいんじゃないかな。ここまで来るので疲れただろう」
「そうだな」
砂漠と森を抜けてきただけだが、だけとは言いながらも結構体は疲れているな。エンチャントをつけているとはいえ、砂漠の熱気は真夏のアスファルト上を歩くのと同等くらいには厳しかったもんな。
俺は貰った炭酸ジュースを飲み干すと、長門と朝比奈さんと3人で宿屋に戻り、部屋に入る。確かに部屋の中はボロボロだったが、ベッドは質素な木造でありながらもまだ作ったばかりのように新しい。
そのお陰ってわけでもないだろうが、布団の中に入ってすぐに眠気がやってきた。
起きて受付まで下りると、既に獣人は待っていた。
「良く眠れたかい?」
「ああ」
「はい、ぐっすり」
「……」
いつも通りというべき三者三様の反応で答える。
宿屋を出て、獣人の後についていく。
「この先に進めばその館がある。おそらく君たちが探しているところだろう」
指した先には何も見えなかった。真っ暗だから仕方が無いな。
「だが、敵は強いよ」
「分かってる」
強いからといって行かないわけにもいかないからな。
力強く頷いた獣人は館の方を指差す。
「そうか。分かった。頑張って来るといい。帰ってきたら、また町に寄ってくれれば宿くらいは貸せるよ」
「ああ」
俺たちは獣人と別れ、手を振ってまっすぐ進むと見た目は今までの館とほぼそっくりな外装の建物があった。
「なんというかあまり変わらないな、何処も」
「そうですねえ」
「外装データを共有しているから」
「……なるほどな」
俺たちは3人、ぼんやりとその古びた洋館を見上げる。良く見るとほんの少し違うのだが、ぱっと見た限りではほとんどそっくりだからまた同じところに来てしまったんじゃないかと心配になる。
ま、むしろ全部が全部同じような構造だったらこっちも助かるんだが、今まで2回共中身は違ったし、今回もおそらく違うんだろう。
ちなみに外装データを共有しているのにちょっと違うのは、どうやら小さなデータを元の館のデータの上に貼り付けてあるからだそうだ。データ容量を減らすための工夫らしいが、そんな現実を知ったところでこちらもどう反応すべきか分からないな。
「中に入りましょうか」
ぼんやりしていた耳に朝比奈さんの声が聞こえて、俺たちは重たい金属製の扉を押し開ける。
入り口からかなり遠くまで続いている赤い絨毯とその両脇をまるで帰ってきたボンボンのお坊ちゃんを迎える執事とメイドの列のようにして、石柱がいくつも並んでいた。
またその更に離れたところを見ると、ところどころにモンスターの石像らしきものが並んでいた。部屋の照明は今回もどうやら松明らしく、壁に整然と並べて掛けてあるのが見える。
「本物みたいですねー」
モンスターの石像に近づいて、ぼんやりとそれを見上げる朝比奈さん。普段は襲ってくるから怖いモンスターたちも石像ならなんとなく可愛げがあるように見えるのかもしれない。少なくとも俺は可愛げがどうのこうのはさておき、怖さは半減以下になっていた。
「しかし……」