せっかくなので正月らしい遊びをしようというハルヒの提案で、というよりは羽子板をしたかったんだろうな、羽子板を持って前と同じ中庭集合した。
「まずは肩慣らしよ」
ああ、分かった。さて相手は、
「………」
分かってる。一緒にやるか、長門。
「やる」
羽子板を構えて軽く打ち出すと、長門も同様に打ち返す。いい感じだな。
「そう」
結構楽しくなって来たが、そうではないのも居たようだ。
「これだけじゃつまらないわね」
言わずもがな、涼宮ハルヒその人である。新年くらいおとなしく楽しむことができないのか、こいつは。
「よし、羽子板大会するわよ」
ハルヒの割にはまともな提案だな。
「なによ、その”割には”って」
お前なら、そうだな、宇宙羽子板とか異次元羽子板しましょ、とかいいそうだったからな。
「宇宙羽子板って何よ」
いや、俺もよく分からん。宇宙的ルールでやる羽子板なんじゃないか?
「そんな訳の分からないこと言わないわよ」
一つだけ言わせてほしい。お前の宣言したこと・提案したことで訳の分からないことじゃない場合の方が極めて少ない。それこそお前の大好きな宇宙人とやらに出会う確率の方がよっぽど高いぞ。
「この地球上、日本に限っても400万人は宇宙人、あるいはそれに準ずる生命体がそんz、」
待て待て待て待て待て。慌てて実希の口をふさぐ。
だーかーらー、生真面目にそんなことを言うんじゃない。
「何、実希?400万人も宇宙人やそれに準ずる人間が存在するっていうの?」
「そうじゃない。あー、なんだ。お前と同じように、それくらいは存在してくれたら嬉しいなー、って希望的観測を持っているだけだ。断じてそんなに珍しくない数ほど宇宙的・未来的・超能力的・異世界的生命体がわんさか居るわけがない」
「なんだ、つまらないわね」
「だが、そんなに居たら見つけてもありがたみも何もないだろう」
「そうよね。キョンにしてはいいこと言うじゃない」
はー…疲れた。
「だからだな、あいつはもっと見た目から「宇宙人だ!」って見える感じの超常現象的存在を期待しているわけで、一般人に紛れてその存在がほとんど人間と同じじゃだめなんだと前言っただろう。それに、一度朝比奈さんたちがお前の期待してる人物だと教えても「アホなこと言わないでよね!」と切り捨てられたんだぞ」
実希に小声で耳打ちする。
「それにだ。もし本当にそんなに宇宙人が居るなら探しに行くわよ、とか一日中、いやあいつが飽きるまで連れまわされるぞ」
「私は真実を言ったまでです」
実希も小声で反論する。
「黙秘権というものがあるくらいだ、言わなくていいことは言わなくてもいい」
「言わなくていいことだと、止められてはいません」
あー、なんでこう生真面目なんだろうか。長門、この妹さんを止めてくれ。
「首筋に延髄チョップ」
それはいろいろとまずい。
「そう…」
少し残念そうだ。妹に何を期待しているのだか。
って朝倉、お前は何を心底残念そうな顔をしているんだ。
「本当のことを言えば情報爆発を観測できたかもしれないのに…せっかくのチャンスだったのに……」
お前も任務をはずれたんじゃなかったのか?」
「……あら、そうだったわ」
これは何と言うべきなんだろうか。職業病…任務病?
「まあ、とにかくよ。普通に羽子板やってもつまらないからトーナメントするわ」
じゃあどうやって決めるんだ?普通の勝ち抜きのトーナメント戦で8人をランダムに、
「参加者は6人よ」
おい、どういうことだ。
「古泉君はレフェリー」
俺はどうするんだ?玉拾いか?
「違うわ。キョンは景品ね」
…………はい?
「優勝者はキョンを1日好きにしていいわ」
ちょっと待て。
「拒否権はないわよ」
横暴だ!
「じゃあ、今回もあみだくじで決めるわよ」
「まあ、諦めましょう。涼宮さんがああ言ったらもう聞きませんし」
古泉、お前はまだレフェリーだからいいかもしれないが、俺は物みたいに扱われてだな、その上勝手に休日を丸々潰されるんだぞ。
「いいじゃないですか。デートと思えば」
確かに朝比奈さんとかだったらいいかもしれないぞ。だが、参加者を見る限り朝比奈さんが優勝する確率は、砂浜でいつの間にかなくなっていたコンタクトレンズを砂浜から見つけ出す確率と同じくらい低い。
「まあ…そこは潔く諦めるしかないかと」
「サーブは互いに3回ずつ、点数は10点先取した方が勝ちよ。最後に羽をちゃんと打ち返した人の得点よ」
ハルヒが勝手に進行していく。
「じゃあ、まず第1回戦目よ!」
はあ、もうどうにでもしてくれ。
<トーナメント 第1回戦 朝比奈みくるVS長門実希>
ここは言う必要もないだろう。0VS10。完封で実希の勝ちだ。
「ふ、ふえぇぇぇ。負けちゃいましたぁ」
「お疲れ様です」
<トーナメント 第2回戦 朝倉涼子VS長門有希>
激しい攻防戦が繰り広げられる。とは言うもののハルヒが見ているからだろう、前の朝倉VS実希の試合ほど羽の応酬の早さはない。
「さすが長門さんねっ……!」
「……」
地面すれすれの羽をバックハンドで朝倉が返し、それを長門がスマッシュ。またそれを朝倉が軽く弾いて長門の手前へ落とし…と、プロのバトミントン大会以上に激しい戦いだった。というか、これは羽子板ではなく別のスポーツになっていないだろうか。
「くっ……所詮私はバックアップだったか…」
得点は3VS10。朝倉も健闘したが、さすが長門。絶対に取れないだろう、いやハルヒが見てなかったら超人的ジャンプだのダッシュだので取れるんだろうが、そんなところに羽が飛んだとき以外は完璧に打ち返した。
「私は負けない」
小さくそう呟いたように聞こえた。長門、実は負けず嫌いなのか?
<トーナメント 第3回戦 涼宮ハルヒVS鶴屋さん>
「あっはっは、ハルにゃん強いなー」
「鶴屋さんも手加減なしでいいですよ」
2回戦目ほどとは言わないが、かなりのスピードので打ち返しあう。もう打ち返せないか?と思ったところも意地でハルヒが打ち返し、結果は10VS6。
ちなみにこの第3回戦はシードになり、ハルヒが決勝戦へ進出。次は準決勝の姉妹対決である。
<トーナメント 準決勝 長門有希VS長門実希>
さすが準決勝といえるだろう。
前半は前後に揺さぶり続けた実希が得点を重ねて5VS1。しかし、途中から長門が猛反撃。うむ、非常に分かりにくいな。えーと、長門有希の猛反撃。これでいいだろう。8連続得点を含む後半戦は完全に長門有希ペースで、最終結果は10VS7で長門有希の勝利となった。
「さすがお姉ちゃんです」
「あなたも強かった」
硬い握手をした長門姉妹の絆は深まったんだろうか。なんかスポコン漫画のノリだな。
そして決勝戦。
涼宮ハルヒVS長門有希。その勝負の行方は?!次回に…続くのか?