今日も今日とて世界を大いに盛り上げる長門有希の組、略称SON組の組室、元1年9組は実に平和である。
 涼宮ハルヒ。役職:超顧問。何が超なんだ、という疑問はこの涼宮ハルヒに持ってはいけない。とにかく超顧問なのである。
 長門有希。役職:組長。特にこれといって権限が有るわけではないが、立場を気にしていろいろと組員のことを気にかけている。最近読書量を減らしたのか、それとも別に本を読む時間を取っているのかは不明だが、常に部室で本を読んでいるだけの置物ではなくなりつつある。
 朝比奈みくる。いや、朝比奈みくるさん。役職:SON組のマスコット。普段は紫のメイド服を身に纏い、小間使いのように働いている。先輩なんだが、年下の超顧問様はおかまいなく、「みくるちゃん、お茶淹れて」とか「みくるちゃん、これ着なさい」とか着せ替え人形のように扱われてたりもする。目の保養にはいいが、若干気の毒だ。
 古泉一樹。役職:補佐。何の補佐かというと………それはハルヒにしか分からない。とりあえず、全体的の補佐らしい。まあ秘書みたいなもんだと思っていいんだろうな。
 鶴屋さん。役職:名誉顧問。SON組に名誉も何もないとは思うが、とりあえず名誉顧問らしい。ちなみに、下の名前は俺も知らない。鶴屋さんは鶴屋さんだ。
 朝倉涼子。役職:副組長。言い換えれば裏組長。しかし、組長にあまり権限がないためほとんど意味がなかったりもする。俺を殺そうとしたこともあったが、現在はその任を解かれているため安心というのは長門談。SON組の一番の料理担当でもある。最近は暇を見つけては古泉が持ってきたレトロゲーをやってるらしい。
 長門実希。役職:………
「なあ、実希。お前の役職ってなんだ?」
「知りません」
 何やら書き物をしている実希。ハルヒには何も言われてないのか?
 ちなみに他のメンバーはと言うと、超顧問様は日本の心の”こたつで居眠り”の真っ最中、長門はネットサーフィンを覚えたらしく、某掲示板群などを見ているし、朝比奈さんはお茶菓子とお茶の準備中、古泉は朝倉とオセロの対戦で今丁度8連敗を喫したところで、鶴屋さんはハルヒの向かいで朝比奈さんの淹れたお茶をすすっている。
「いません」
 ……そういやさっきから実希は何を書いてるんだ?
「活動日誌です」
 活動日誌?そんなものがあるのか。
「あります。生徒会から配布され、活動内容等を書き込んで提出しなくてはいけません」
 内容……そんなものは全くと言っていいほどないだろう。それと書けないこととな。そこらへんは上手く濁してるのか?
「どんな風に書いてるんだ?」
 この行動が失敗したね。いや、ある意味ではこういう行動に出ておいて逆に良かったのかもしれない。
「えー……実希君、これはなんだね」
「ですから活動日誌です。分かりやすく絵を交えて書いています」
 活動日誌は見開き1ページで構成されている。本日の日付、気候、筆記者、本日の活動予定、実際の活動内容、反省、次回の活動予定項目と予定日等で構成されていて、実際の活動内容のページが大きめに取ってあるため、絵を交えながらでも十分書くスペースは取れるわけだ。最初の方は文章がぎっしりと書かれているが、絵がある部分は少し少なめになっているし、見やすさという面で良いだろうと思う。だから、この試みは非常に良いと思ったし、分かりやすさという面からも良いと思う。
 ただし、という注意書きが必要だ。「絵が上手ければ」ということである。
「…なあ、実希。この未確認飛行物体はなんだ」
「何を言っているんですか。凧ですよ」
 このへろへろのひし形が凧かい。で、なんで凧糸もなく浮いているんだ。
「あ、鋭いですね」
 鋭くもなんともない。
「凧糸描き忘れてました」
 線を引き始めた実希は……フリーハンドで2本の蛇行した線を引き、その間を黒く塗った。……うなぎか。
「もう、だから何を言ってるんですか。凧糸にも太さがあるんですから、その表現は必要でしょう」
 綱引きの綱でもあるまいし、太過ぎるだろう。凧糸の太さなんて鉛筆、実希はシャープペンシルという文明の利器を嫌い未だに鉛筆派なのである、その太さだけで表現すればいい。いちいち厚みを書かなくていいだろう。
 次にこのグレイみたいな目がでかくて頭でっかちの人間は誰だ。
「それはあなたです」
 そうか、俺はこんな妖怪だったのか。
「はい、そうです」
 今まで気づかなかったぞ。鏡は錯覚で人間に見えて、ってんなわけあるか!
「妖怪であるのは嘘ですけど、それがあなたを描いたというのは本当です。結構自信作なんですよ」
「実希」
「なんですか?」
「お前は画家にはなれないと思う」
「別になる気はありません」
 それまでの活動日誌をさかのぼって見てみる。ツチノコみたいなのとか、ちなみに本人が言うにはレンコンだそうだ、未確認生物のオンパレードだった。
 朝比奈さん。すみませんが、活動日誌書いてもらえますか?
「あ、はい」
「いえ、私が」
 頼む、やめてくれ。それか絵をもっと練習して上手くなってからにしてくれ。そんな不満そうな顔で見てもだめだぞ。
「不満です」
 言ってもだめだ。
「あ、あの……別に長門さん……えと、実希さんがやってもいいんじゃないでしょうか」
 優しいのはいいことですが、これを生徒会に提出したら本当に俺達が宇宙人とかと遊んでいるんじゃないかと錯覚するかもしれないです。それはいろいろと問題ですよ。
「でもこれは涼宮さんが決めたことですから…」
「そうですよ、超顧問の涼宮ハルヒさんからお願いされたんです。ですから私の仕事なんです」
 活動日誌をひったくって開いて続きを書き始める。そこまで書きたいのか。
「……分かった、そのまま続けてくれ。ただし、絵は控えめにな」
「何かひっかかりますけど、分かりました」
 やれやれ、全く困ったもん……、
「ちょっと待て、実希。お前はあの凧揚げのとき居なかったはずだよな」
 SOS団メンバーのみしか居なかったから、誰が凧揚げしていたとか、そもそも凧揚げをしたという事実さえ実希は知らなかったはずだ。それに、あれは夢の中の話ということになっているし、あれが夢であるかないかの確証もまだ取っても居ない。よって、実希が知ることができるはずない。
「閉鎖空間で楽しそうに凧を飛ばしてたじゃないですか」
 あの季節感ぶち壊しな閉鎖空間はお前特製だったのか。通りで長門が指差したところから崩壊が始まったわけだ。
「凧揚げしやすい環境だったと思いますけど。寒くもなく、風も丁度いいくらいにしましたし。あ、ちなみにあれは申請なしでの閉鎖空間生成練習もありますが、凧揚げをしたいと言っていましたからそれを考慮して凧も入れておきました」
「冬の寒い時期にやらなきゃ風情も何もあったもんじゃないぞ」
「そういうものですか?」
 そういうものなんだ。
「……分かりました。次、閉鎖空間を作るときは冬らしい空間にします」
 次があるのか。
「よければ今夜でも」
 全力で遠慮しておく。
「そういえば涼宮さんが言ってました。SON組ブログ製作はどうなっているのか?と」
 う、しまった。まだ何も書いてないぞ。
「よければ私がそっちも」
 勘弁してくれ。