とりあえず、ファーストコンタクトでは、俺たちが単色にしか見えていないことに気づかれてないようだ。いや、まあ実際に話したところで「何アホなこと言ってるのよ!」と怒鳴られそうだが。
「どうなるか分かりませんので、涼宮さんには色が分からないとこに気づかれないようにしましょう」
そのつもりではいるが、なかなか大変だぞ。
と思っていた直後、最初の関門が目の前に立ちはだかる。
「キョン、パズルゲームやるわよ。3つそろえて消すやつ」
なんでこういうときだけお前はそういうものを選ぶんだ!
「ん?キョン、なんか言った?」
「いや、なんでもない」
心の叫びが思わず口を出そうになったところを必死で押さえ、ハルヒの隣でコントローラを手にする。…いつもならカラフルなあのボタンが、今は全部真っ黒だ。
まだこっちは記号はちゃんと振ってあるし、こっちはどうにかなるだろう。一番の問題はどうやってゲーム内で同色のものを消すか、である。
「さあ、かかってらっしゃい!」
大きく腕を振り上げてチャンピオン:涼宮ハルヒが吼える。え?挑戦者?俺だよ、俺。
とりあえず、色も分からないから適当に積んでみる。
「ちょっと、最初から放棄?ちゃんとやる気見せなさいよ」
ジト目でこっちを見るな。仕方がないだろうが。
適当に積んでみたところで、自分が見える通り全部が黒になってくれるわけも無く、つまり本来カラフルなぷにぷに玉が運良く何回か消えるのを見るだけで、ハルヒによる妨害玉が山のように詰まれてゲームオーバー。
「張り合いなさすぎ。もうちょっと考えてやんなさい」
反論したいが現状では反論できない。仕方がない、今はじっと我慢だ。
くいくいと服を引く感触。ん?長門?
「私が」
「何、有希がやるの?いいわよ、選手交代ね」
長門、お前も色が分からないんじゃなかったのか?
「見てて」
耳元でそう言うと、ゲームに向かい合う。
ゲーム開始の音と共に、ハルヒはどんどんと玉を積んでいく。対する長門、秘策はあるのか?
―なんと、積まれた玉がちゃんと消えていく!
しかし、積む速度がハルヒの何分の1かくらいであるため、妨害玉が徐々に積み重なっていき、最後には一番頂上に積みあがってしまい、床が抜けて全部落ちていく。ゲームオーバーか。
「有希にしては弱かったじゃない。まだやったことないゲームだったかしら」
こくり。
「まあそれならこれくらいでも仕方がないわね」
こくり。
「さあ、次は誰?」
やる気満々で、お前は楽しいかもしれないがこっちは大変なんだぞ、俺たちを順に見ていく。
「よし、みくるちゃん、相手になりなさい!」
「ふ、ふぇ、私…で、あっ」
最後まで喋るまもなくハルヒに引っ張られて隣に正座させられる。そして無常にもゲーム開始の音。
はうはう言いながら必死に玉を積んでいく朝比奈さんを見ながら、長門に耳打ちする。お前、どうやってあれだけ消したんだ?
「さっきの話と同じ。よく見ると、黒の量によって少しずつ玉が違って見える。だからそれを頼りに積んでいく」
積み方は結局計算しなくてはいけない、と付け加える。そうか、それなら俺でもなんとかできそうだな。
テレビ画面では最速で崩壊した玉の壁を前に、よよよと泣き崩れる朝比奈さんと、どうよ!と勝ち誇ったハルヒ。いや、朝比奈さんの場合、普通に戦っても負けそうだぞ。お陰で”色が分からなくて”負けてもハルヒが疑うことはないだろうけどな。
「うーん、みくるちゃんじゃ張り合いなかったわね。次は誰?」
よし、俺がリベンジだ。
「キョンが?まあ、どうせあたしが勝つけど、いいわよ」
ハルヒの隣に座りいざ勝負。さっきまでの俺とは違うぜ、なんといっても攻略法を長門に教えてもらったんだからな。
玉をよく見る。見る。見る。見…、
「何さっきから画面ばっかり見てるのよ」
長門、すまん。俺には色の違いが分からない。やっぱり全部真っ黒だ。
しかし、このまま終わってしまってはまたハルヒに何かと言われそうだ。どうすればいい…。
ハルヒが片っ端から消していくため、妨害玉が数を重ねていく。むう、こうなったら!
「……キョン、何してるのよ」
見れば分かるだろう。端の2列に塔を建てているんだ。
「意味が分からないわよ」
説明しよう。
こういうタイプのパズルゲーム、上級者は順番を考えて乗せていくものだが、初心者にはこれを計算するのにはちと荷が重い。そこで、考案されたのが「投入口の列以外を片側全部積み上げて下から適当に崩していく」という方法である。
いや、別に俺が考案したわけじゃないんだけどな、そういう話を昔聞いたのをなんとなく思い出したわけだ。これなら、色が見えなくても最初からほとんど運でやるもんだから、特に怪しさはないだろう。
「まあ、こういう方法が昔からあってだな、今ちょっと挑戦してみてるだけだ」
できるだけさりげなく言いながら積み上げていく。
さっきの完全なランダム積みの横に広くではなく、縦に高く重ねてあるから、連続でしばしば消え、ハルヒの妨害玉を消したり、降らせないようにしたりと少しは健闘した。
しかし、やはり運に頼るとだめだな、妨害玉の壁は厚かった。
最終的に本来消さなきゃいけない列の下に妨害玉が密集、このため自分の玉を消しきれず終了。これでもだめだったか。
「まあ、前よりはがんばったわよね」
ああ、がんばったさ。がんばるしかなかったからな。
「このゲーム飽きたわ。他のゲームしましょ」
まだやるのか。