「あー、もう。つまんないわねー。なんか起こんないかしら、ゴジラが町に攻めてくるとか」
こんな物騒な言葉が出てくるのはハルヒ以外、俺は知らない。まあ、こんな言葉が出てくるほど、平和なわけだが。
とは言っても、マジでゴジラなんかが攻めてきたら困るんだがな。あの”神人”とかいうこんにゃくお化けみたいなの以上にどうにもなりそうにないからな。ああ、でもゴジラを退治する方法はあるんだっけか、どうだったかな。
そんなことに思考をめぐらせていると、ハルヒが窓際で英語で書かれたハードカバーを読んでいる実希に指令を出す。
「実希、なんかしなさい。笑わせるやつね」
「笑わせる…?」
小首をかしげる。
「時そば?」
それは落語だ。渋いぜ、実希。
そういうのじゃなくてな、まあそういうのもいいかもしれんが、もっと分かりやすいやつをだな、
「分からない」
「ほら、がちょーんとか」
谷啓かよ。
「がちょーん…?」
小さく首をかしげる。
「まあ、有希の妹だもの、仕方がないか」
机に突っ伏すハルヒ。だったら言うなよと思ったが、実希自体もそんなに気にしてない様子だし、まあいいか。
「そういえば…実希ってさ、有希よりみくるちゃんに似てない?」
「え、え?」
「ほら、髪の色とか、胸の大きいところとか…むむっ、実希ちょっと揉ませなさい」
「どうぞ」
いちいちハルヒの傍まで行く実希。いちいちそんなことせんでもいいのに。ぶしつけに胸を揉むハルヒとされるがままの実希。部屋の空気が異様な雰囲気に包まれている。
「…あたしより大きいんじゃないの…?いくつよ、耳打ちしなさい」
ごにょごにょ。
「……負けたわ」
がっくりと敗北感丸出しのハルヒ。
「大きさが気になるのですか?」
「まあ、なんとなく悔しいじゃない」
「そうですか」
終始不思議そうな顔をしている実希。気にしなくていいぞ、実希。
「まあ、とにかく、実希はみくるちゃんに似ていると思うのよ」
そりゃそうだ、本当は朝比奈さん風長門みたいなもんだからな。眼鏡の奥の、眼鏡属性はないからはずした方がかわいいと思うんだがな、やや無機質的な目は長門によく似ているが、全体的な体つきとか綺麗な栗色の髪なんかは朝比奈さんそっくりだ。
「分かったわ」
何が分かったんだ。
「実希は有希とみくるちゃんの子供ね」
ぶっ、あちっ!思わず茶を吹いた。
「何やってんのよ」
「何やってんのよ、じゃない。その発想はどこから生まれてくるんだ」
「なんでよ、そっちの方がおもしろいじゃない」
これはおもしろいとかそういう話じゃない。朝比奈さんなんか真っ赤になって俯いてるじゃないか。
「これが普通に「実は有希とみくるちゃんは遠縁で繋がってるのね」とか言ったら何の変哲もないわ。こうやって人と違った発想をするのが大切なのよ。それにおもしろかったでしょ」
おもしろくない、全然おもしろくないぞ。というか、驚いただけだ。
「実希、こういうものがギャグよ」
違う、絶対違う。
「覚えておきます」
覚えておかなくて良い。というよりは覚えないでくれ、頼む。
「あーあ、ホント、隕石でも降ってこないかしら」
危険ランク上昇、ゴジラ以上にやばいだろう、それは。
こんな状況じゃ、この小娘の頭の中では俺たちは何度も死に掛けているに違いない。死にかけている、と言うのは…まあ、ハルヒが俺たちSON組メンバーが死んだところを想像するような奴ではないと俺が想像するからで、実は「おもしろければいいじゃない」精神で、7つの玉でも見つけて復活させられているのかもしれんがね。
俺がもし玉を集めて願い事するならこうだな。「少しだけ刺激的で、基本的には平穏な日々をくれ」
「なんで相談が来ないのかしら。不思議相談よ、不思議相談。あの口さけ女の話もいつの間にか終わっちゃってたし」
というよりはお前の方が飽きたのもあるだろう。まあ、もう現れないだろうが。
「こうなったら、部活部活中に突撃取材して、最近不思議なことがなかったか調査する必要があるわ。本当は何か知っているのかもしれないけど、シークレットサービスにでも目を付けられて言えないだけかもしれないしね!よし、さっそく行動よ!」
立ち上がったハルヒは、「さあ全員行くわよ!」と部屋を出て行く。「さっさと来なさい!」
面倒だな…というか親切の押し売りでも迷惑なのに、迷惑の押し売りなど、ゲームの初回限定版の図体ばかりでかい箱並にうっとうしくて仕方がないだろう。
すまない、この学校の生徒諸君、そして教師達。俺には、この歩く爆弾をとめることはできない。
すすすっと実希が俺の隣へやってくる。どうした?
「私は朝比奈さんとお姉ちゃんの遺伝子から作られた試験管ベイビーなので、実はお姉ちゃんと朝比奈さんの子供というのもあながち間違いじゃないのですよ」
マジか?!
「…と言ったら、どうしますか?」
真顔で言わないでくれ。真面目に信じてしまうぞ。
「ギャグです」
だから、それはギャグじゃないし、覚えるなって!