期末テスト期間も全くお構いなしに、今日もSON組は活動を継続していた。テスト期間中くらいは休息日として早く帰ればいいものを、どうしてこうも皆集まっているんだろうね。そういう自分も集まっている1人なんだが。リーダーである人間が休日を認めないから仕方がないんだろうなあ。
「それでキョン、テストの手ごたえはどうだったのよ」
 2つ目のみかんを剥いて、2房ほど口に放り込みながらハルヒが一番聞かれたくないことをさらりと尋ねてくる。
 結果は言うまでもない。まだ朱入れしていないだろうが、自分の出来を自己評価するならば悲惨なもんだろう。補修に引っかかるかかからないかっていう危険水域を漂っているんじゃないだろうか。
 そんな俺の消極的な発言に、自称最高顧問は人差し指を俺に突きつけてこう言った。
「あんたね、あんな簡単な問題で難しいとか言っててどうするのよ」
 どうするも何も、難しいものは仕方がないだろうが。俺はお前みたいに元々頭の出来がいいわけじゃないんだ。数十分残して全てを解き終わるお前と一緒にするな。
 だったらせめて少しくらいは勉強しろというものだが、そういう”出来ない人間”に限って余計にやらないんだよな。分からないからやる気にならない。
 さらに今学期の期末テストの日程が悪かった。今日は理数系が重なっていたのだ。せめて難しいのは日を変えてやってくれよな。勉強してないからどっちにしたって分からないが、まだ日が違えばやばい教科を一夜漬けでどうにか乗り越えられるのだが、同時に3教科も一夜漬けしなきゃいけないものを持ってこられたらどれもあやふやな記憶でしかテスト中、思い出せない。お陰でほとんど解けやしなかった。
 よく考えてみれば、この部活に居る人間(じゃないのも含まれているが)は比較的頭のいいやつが揃ってるよな。ハルヒは言うまでもなく、朝倉はクラスメイトから分からないところを次々に教えているし、長門はそれ以上に頭が良さそうだ。実希も曲がりなりにも情報統合思念体に作られた人造人間で、おそらくそこいらの人間よりは遥かに頭脳は優秀だろう。
 古泉も赤点だのなんだのには困らない程度の学力があるらしいし、鶴屋さんもテストについて悩んでいる様子は一度も見ていない。今明日のテストに向けてカリカリとシャーペンを走らせている朝比奈さんは、少し間が抜けているというか、漢字で書くべきところを平仮名で書くようなミスはしていそうな気がするが、補修があるとかいうことも聞いたことが無い。
 てことは赤点候補なのは俺だけか?
「アホなことして、補修とかになるんじゃないわよ。せっかくのパーティーが台無しになるんだから」
 俺だって好きで補修になんかなるものか。ただでさえテストは嫌気が差すのに、さらに補修のことなんか考えたくもないね。
 というか正直テストの話などしたくはない。どんどん方向がネガティブになっていくからな。仕方がないので、話の矛先を他に向けることにした。
「それはいいとしてだな、パーティーの方はどうなってるんだ? さっぱり準備とかしてるように思えないんだが」
「その話は後でするわ。それよりも古泉君、クリスマスパーティーの方はどうなってる?」
「お任せください。着々と準備は進んでいますよ。進捗度合から言えば、約8割といったところでしょうか。後は前日辺りに食事の準備をして、それに必要なものを買い足すといった感じです」
「うんうん、それはいいことよ」
 映画監督が自分の作った映画を通しで見て、満足したような表情のハルヒ。そして、
「じゃあ1周年記念のパーティーの飾りつけをしに行くわよ」
 ……しに行く? どこにだ。パーティーはここでやるんじゃないのか?
 俺の当然の疑問にハルヒは首を振って答えた。
「最初はそう思ってたんだけど、いつも同じところってのも芸が無いし、座る場所も狭いのよね」
 そりゃ元はただの教室だからな。畳で直に座れる場所を拡張したとはいえ、その広さは10畳もない。大きなこたつを置いたら、あまり動ける場所が無いのは確かだ。
「後もう1つ。台所も無いから、あまり大したものも作れないわけよ」
 だろうな。だがそうするとどうなるんだ。
 ハルヒは俺から視線をずらし、その隣でページを捲っていたやつにあわせた。長門がどうかしたのか?
「有希の部屋を借りることにしたわ」
 自分が呼ばれたのに気づいたか、長門は本からゆっくり目を離し、ハルヒを見てから俺を次に見て、こくりと頷いた。
 長門の部屋は割と広い方だし、教室全体の広さほどはないがここの畳よりかは広いだろう。それに台所もある。条件は満たされている。
 が、長門はそれでいいのか? それに今住んでるのは、長門だけではなくて実希もだろう。
「別に構いませんよ。部屋の飾り付けが増えたところで、眠れなくなるわけじゃないですし」
 割とあっさりとした実希の返答。長門もいいのか?
「構わない」
「ほら、2人とも良いって言ってるのよ」
 別にダメとは言ってないけどな、もしかしてお前が勝手にゴリ押しでねじ込んだんじゃないかと思っただけだ。お前ならやってもおかしくない。
「それじゃ行くわよ。もう今の内に飾りつけしておいた方がいいわ」
 行くのはいいとして、飾りつけるものはあるのか?
 ハルヒはこの前と別の袋を俺に見せる。さすがというべきか。こういうときの行動力だけは見習ってもいいかもしれないな。