パーティーとパーティーの間が数日しかないからだろうか、ちょうど3連休が挟まり、さらに既に終業式が終了している今日はさすがにハルヒは集合の電話をよこすことは無かった。びくびくしながら待っていたんだがな。
 いつものハルヒの行動から考えれば、それが仏滅であろうと大安であろうと、思い立ったが吉日を地でいくからな。
 かといって完全に暇かといえば、そうではなかった。
「キョンくん、ねえ、キョンくん!」
 昼、それも丁度昼食を終えていい具合に眠気がやってくる時間帯に、リビングのソファでまったりした時間を過ごしていたところへ、妹が大きな足音を立てながらやってきた。用件は自分の部屋をクリスマスらしくしてくれ、とそういうことだった。クリスマス前になるとそれが俺の仕事として組み込まれるのは毎年のことではあるのだが、今年は既に2回もそれを行った後だったからな、あー、めんどくせえ。そんな感じだ。
 無視してたぬき寝入りを敢行してみたが、即座に乗りかかってきて起こされた。ううむ、どうやら逃げは通用しないようだな。
 俺は両手を上げて抵抗しない意思を見せて妹と共に部屋へ向かった。
「ねー、キョンくん。あそこにこれおいてー」
 指示に従って、必要なものを全部設置していく。司令官の妹はサンタの服装をしたクマの人形を持ったまま、カーペット敷きの床に座り込んでいる。不器用にはさみを使って星みたいなのを切り出しているようだった。
 部屋中を歩き回り、最近やり終えたばかりのクリスマス装飾をそこここにつける。もうそろそろ見飽きてきたな……この赤と緑は。何よりも目に悪い。
「あ」
 壁にできたての黄色星を両面テープでつけていた俺の背後で、妹がダンゴムシが列を成していたをの見つけたみたいな声を上げた。
「どうしたんだ?」
「うん、のりが固まっちゃってるから、出ないの」
 見るとリップクリームみたいな押し出し式ではなく、液体のりが見事に硬化していた。どうやら液体のりのふたを開けっ放しにしていたようで、完全にのりの全体が固まってしまっていた。元々容量も少なかったのもあって、それじゃもう使えないな。
 俺が「もう飾りはこれくらいでいいんじゃないのか?」と妥協案を出すのだが、部屋の持ち主はどうしても作りたいものがあるようで、計画の中止についてダメの一点張りである。むう、困った。
 俺の部屋に代わりののりがないか引き出しをあさってみるも、こういうときに限って残ってないようだった。困ったな。
 数十秒悩んだ末、俺は財布を引っつかんで家を出ていた。どうしても作りたいようだし、かといって悩んでてものりが自然発生するわけでもないからな。無いものを探すよりは、買いに行ったほうがよっぽど時間を無駄にしなくて済む。
「ちょっと待ってろよ」
 財布をポケットに入れて、防寒対策をしてから自転車に飛び乗って最寄のコンビニを目指した。


 買い物を終えて店から出て、容赦なく吹き付けてくる冬風に身を縮めていると、向こうから見慣れたショートカットが俺と同じように、しかし別の袋を提げてやってきた。
「どうした、長門。こんなところに買い物か?」
「そう」
 見たところ、袋は本屋のものではなさそうだ。ついでにあまり重そうなものでもない。
 食べ物……でもないようだ。袋が見慣れない店の名前である。
「中、何が入ってるんだ?」
 長門はゆっくりと左右に顔を往復させた。
「教えることはできない」
 珍しいな、長門が何かを隠すなんてのは。俺が聞いたらまずいことなのか?
「誰にも教えないように言われている」
「言われてる……って朝倉か?」
 首肯。
「実希にも」
「そうなのか」
 長門が頑なに、というわけでもないかもしれないが、少なくとも拒否したその中身は気にならないといえば嘘になるのだが、別にどうしてもその中身を知りたいわけでもなく、それ以上無理強いはしないでおいた。
 なんといっても長門がダメだということだからな。もしかすると聞いたらまたあの地底図書館に1人取り残されるようなことに巻き込まれるんじゃないだろうか。その可能性を危惧して、俺を止めてくれている可能性もある。それなら尚更長門を問い詰めることもできないってわけだ。
 ハルヒに呼び出されていない間に長門が何をやっているのか想像できないし、逆に何をやっていたとしても頷ける。
「きっとその内に理解できる」
「そうか」
 そう言って長門はその場を去っていった。俺はその背中が星の砂が入っているような小瓶くらいになるまで、何とはなしに見ていた。
 また変な騒動に巻き込まれてたりしないだろうな。もうすぐクリスマスだからといって気を緩めてたらまた得体の知れないものが現れた、なんてことになってたらシャレにならん。
 無理はするなよ、長門。……俺を頼ったところでほとんど解決にならないだろうが。