ハッピーマンデー制度というのはご存知だろうか。土曜を含めて週2日の休みが定着し始めていた2000年に、休日を一部改正することによって成人の日と体育の日が、2003年に海の日と敬老の日がそれぞれ月曜日に移行した。
これは長期休暇を取ることによって旅行等をしやすくすることで行く先での消費を促し、景気向上を目的としたいわば経済政策とも言えるものである。
以上のような理由から成人の日が1月の第2月曜日に移行したため、この土曜日からは3連休となっている。
そう、3連休である。3連休とは3日連続休みが続くことで……ってそんなところはさすがにどうでもいいか。
3連休ともなれば県外の旅行も十分できる日にちであるし、そんな休暇をうちの部活の最高顧問が見逃すはずがないだろう。ただでさえ1日しかない休日でさえ無駄に活動的なんだからな。3連休ともなれば水槽の水が綺麗になって喜んでいる金魚以上にハルヒが活発になるだろう。
そう思って家で携帯の電源を入れて待機していたのだが、昼になっても携帯はうんともすんとも言わない。今更ながらに考えてみると前の3連休もそうだったような気がする。最終日辺りに突然呼び出されたが、県外まで旅行なんてことはそういやなかったなあ。
政府がせっかく設定した3連休には何もせず、1日しかない祝日には人を呼び出す。呼び出される側としては迷惑極まりないな。
しかし暇だ。いつもはなんだかんだとハルヒに呼び出されちゃやれ荷物を運べだの、やれ何かを取りに行くだの言われてたから休憩する暇なんぞ無かったが、全くやることがないとなると今度は暇を持て余すよな。
かといってせっかくの休日をただ家で寝て浪費している気がするし、今から1人でゲーセンに行くのもなんだかな。谷口や国木田を誘うにも時間が微妙だし、何よりもハルヒが突然夕方に呼び出すとも限らない。成る丈フリーであった方がいいだろう。
仕方が無いから、デパートまで足を伸ばしてみることにした。いろいろ揃ってるから、というよりは店の数が多いから1つくらいは暇を潰すのにいい場所でもありそうだ、という希望的観測に基づいている。逆に言えばそれ以上のなにものでもない。
さすがに休日ということもあって、デパートの中はかなりの賑わいを見せていた。大半が親子連れとカップルで、どうにも居心地が悪い。ああ忌々しい。俺だって朝比奈さんと手をつないで、こんな場所をデートがてらウィンドウショッピングでもしてればこの混雑も苦にならないだろうが、今はパズルゲームでのお邪魔キャラでしかない。
その上、だ。
「キョンくん、あっちあっち! あっちで何か売ってるよ!」
分かったから引っ張るのはやめなさい。
1人で来るつもりだったのだが出る直前で妹と玄関近くで遭遇してしまい、最終的に連れて行くことになっちまった。その妹は今、デパートの外の一角で屋台を出している鯛焼き屋に夢中だった。1個買ってやるから、食ったらおとなしくしてくれよ。
「おいしいね」
頬にあんこをつけながら鯛焼きを頬張る妹を連れて、ついでにと親から頼まれた買い物リストを見る。こんなことなら家で冷凍牛肉の自然解凍みたいにベッドに横になってた方がよかったかもしれんなあ。
まずは薬屋だな。買うのは絆創膏と消毒液か。
「行くぞ」
「ああん、ちょっと待ってよう」
ぴょこんと備え付けのベンチから降りて、慌てて鯛焼きを包んでいた紙をゴミ箱に捨てる。
「いいよー」
かなりの人出だからはぐれないように手を引いて薬屋までずんずんと進む。くそ、休日なんだからもっと行くところがあるだろうに。なんでこう同じ場所にたむろするんだろうね。
薬屋で目当てのものを買ってすぐに通路へ出る。次は……妹用のシャーペンと消しゴム。文房具ってことは本屋か? 今は食料品売り場とかの棚の一部に置いてあったりもするよな。どっちでもいいか。
「くまさんの消しゴムがいい」
あったらな。そんなのがあるかどうか知らんが。
ここからだと本屋の方が近いし、先に本屋から行くとしよう。ちゃんとついてこいよ。
「うん」
人の間を縫って進み、本屋で文房具が売っているコーナーを探す。と、一角にそれらしい場所を見つけた。
鉛筆や消しゴム、シャーペンにボールペン、万年筆、筆ペンと全体的な種類は豊富だが、いかんせん同じような形状ばかりだ。ついでに妹ご所望のくまさん消しゴムなんざ置いていない。そもそもそんなのがあるのか知らないが。
「下行くか」
じっと白い消しゴムをにらみ続けていたところでそれがキャラ物の消しゴムになるわけでもないし、さっさと見切りをつけて次なる場所へ進むことにする。
と、そうしてその場を去ろうとして振り向いた目の前に、
「何してんの?」
それはこっちのセリフだ。
「あ、ハルにゃんと有希ちゃんだ〜」
心底不思議そうな表情の涼宮ハルヒと相変わらず表情というものを作り忘れたんじゃないかと思う有機アンドロイドの長門有希の、よく考えたら珍しいコンビがそこに並んで立っていた。