「去年はいろいろあったわね」
今日はこんな一言から。確かにな。俺がお前に振り回されたりとか、朝比奈さんがお前に振り回されたりとか、長門がお前に以下略、古泉以下略。以下略数名。つーか、お前に振り回された覚えしかない。
「まずは、SOS団を作ったでしょ」
ああ、最初はびっくりしたぜ。授業中に突然俺の襟首ひっつかんで机の角に引き寄せて激突だし、「気が付いた!」とか唾を飛ばしながら叫ぶし、階段の踊り場まで、それも薄暗い埃っぽい屋上の手前のな、連れて行かれたと思ったら、ネクタイを引っ張ったまま「協力しなさい」だもんな。
「すぐに続々とメンバーが集まったから良かったわよね」
それはない。お前が強制的に連行し、拘束し、命令しただけだろうが。まあ、最終的に拘束ではなくそれぞれがそれぞれの思惑を持ったままここに留まっている、というのは付け足しておかなければいけない話ではあるが。
「そうそう、映画も作ったわよね」
あのどうしようもない、シナリオというのもおこがましいやつな。そこらのB級映画監督もびっくりだぜ。
「スポンサーも付いたし」
付いた、ではなくあの手この手で付けた、だろう。
「あ、続編作らなきゃね。みくるちゃん、次回も主役よ」
「また、わ、私ですかぁ」
「で、今度は新しく入った朝倉さんと鶴屋さんもぜひ出演してもらうわ!」
「あら、楽しそう」
「あっはっは、まかせておいてほしいね!」
そして、続編なんか永久凍土の中に仕舞っておいて欲しい。いや、最近地球温暖化が進んでいるからな、いつ溶け出してくるやもしれん。だったらそうだな、地中深く、願わくばマントルまで穴を掘り、そこに投げ込んで欲しい。燃え尽きる?願ったり叶ったりさ。
まあ、一部乗り気な人たちもいらっしゃるようで、その上ハルヒが飽きなければ、ほぼ間違いなく続編が完成するわけで、前日の編集作業をまた俺がするかと思うと、さっそくマリアナ海峡並に深いため息が出るね。
「あとは私たちがアニメになったりね」
これ以上ネタになる話はないからな。できれば俺は目立たずに、とにかく傍観者で居たかったところだが、何を間違えたか俺視点で話を進めやがる。
「なんだかんだ言って、キョンも乗り気だったじゃないの」
あれが乗り気というのなら、俺の本当の乗り気だとハルヒ以上のハイテンションになる。俺が「よっし、宇宙人でも探すぜ、はっはっは」とか、うむ、ありえないな。
「キャラクターソングも絶好調だったし」
SOS団メンバーだけではなく、朝倉や鶴屋さん、果てにはうちの妹やうちに相談を持ちかけてきた喜緑さんまでひっぱってきて、本当に何がやりたいのやら。その内こんな会話が行われそうで嫌だ。
「キョン、宇宙人探しはもうやめたわ」
「そうか、とうとう足を洗うんだな」
「今度は日本、いえ世界を統一するわ!私の歌を世界中に響き渡らせるの!」
真面目にありそうで寒気がする。こんなことを言い出さないことを切に願うしか、この俺にはできん。
ちなみに、現在はハルヒ、長門、朝比奈さん、朝倉、鶴屋さん、うちの妹、喜緑の7人分が好評発売中だ。買ってもらえば我々SON組の資金源となるため、ありがたいことではあるが、ハルヒのわがままに使われるだけで、いやでも朝比奈さんのコスプレ衣装がまた増えるかもしれないし、まあ非常に複雑な気分だよ。
「ああ、そうそう。キョンと古泉君のも出すわよ」
何?!
「そうね、次は誰のを出そうかしら…。キョンのアホそうな友達、えーっと名前何て言ったかしら、谷脇?とか国山?だったかしら」
谷口と国木田だ。国木田はともかく、谷口は同じ中学だったんだから覚えておいてやれよ。
「あの辺も適当に歌わせておけばいいわよね。うん、決まり決まり」
勝手に決まった。まあ、許せ、谷口に国木田。俺にはもうすぐ起こると言われていて未だ何十年も起こっていない東海地震相手くらい、このハルヒの傍若無人ぶりに大しては無力だ。
「そして、このSON組を作って、新しいメンバーが増えたわよね」
正式メンバーに朝倉と鶴屋さんを加え、途中から長門の妹、正確にはスタンドアローン型のTFEI後継機であるが、長門実希が仲間に加わり、長門有希その人がメンバーのリーダーになった。
いや、まあ実質上のリーダーは相変わらずハルヒだったりするから、名目上という感じはあるがね。
「そうね、有希には組長らしくサングラスでも掛けてもらおうかしら」
「おい待て。お前は何の組長を想像しているんだ」
「何って、ほら、モヒカンで「夜露死苦!」とか言ってる」
それとは大きく違う。それに今時そんなベタなのは居ない。
「モヒカンって何」
「髪の毛をこう前に持ってきて」
教えるな。長門も聞くな。
「分かった。今度やってみる」
やめてくれ。というより、まず長門の髪の毛では量が足りなくてできん。
「そう」
ああ、そうだ。
「じゃあサングラ、」
だからそれはもういいって。
「……そう」
なんとなく残念そうな長門。お前にはもっと別に似合うものがあるはずだ。
「今年こそは宇宙人を見つけるわよ!そして、映画の続編とアニメの続編、それにハリウッド出演もするわ!」
勝手にしてくれ。俺は敵前逃亡、白旗振って撤退させてもらう。
「うん、こうしては居られないわ。まずは校内を見回って宇宙人が居ないか確かめるわよ!」
ともいかないわけだ。だあ、分かったから引っ張るな。
今年も相変わらずハルヒに振り回されっぱなしの一年には間違いなさそうだ。