日曜日にはハルヒが完全復活を遂げていて、休み前以上に張り切って朝比奈さんにコスプレをいろいろさせていた。このままずっと風邪で寝込んでいればよかったのにとはさすがには思わないが、少なくとも風邪なんか引かないで、前の調子で居てくれた方が、少なくとも朝比奈さんとしては良かったに違いない。
俺? 俺にとってはこっちはこっちで非常に良い。朝比奈さんには悪いが、目の清涼剤になるからな。
そんな日曜日にも、止せばいいのにしとしとと雨は降り、夜にもなると爆音に近い酷い雷と雨へ。その威力は思わず妹が俺の部屋へやってきて泣きついてくるくらいだった。どうにかなだめて親の部屋へ行かせたが、確かにこんなに雷や雨がうるさかったら寝るに寝れないな。
翌日になってもそれは止まず。
『台風でもねえのに、今日は休校だってさ』
「だろうな。こんな雨の中、学校まで行けなんてこと言ったら、生徒から大ブーイングだ」
谷口の電話から、休校になったという連絡が伝えられた。ある意味では予想通りだが、雨と風が酷いからって休校にしてもいいのかね。
『問題無いだろ。大雨に暴風、波浪警報まで出てる。台風じゃないが、登校を取りやめるには十分すぎる理由になるだろ』
そういやそうだっけ。大抵台風が来たら休み、って感じで覚えてたしな。後は今までもそれなりにこういうのあったが、そのときは休校にはなってなかったもんなあ。
『確かに今日は随分と酷いよな。テレビでもずっと言ってるぜ。こんな時期にこれほど突然、それも大雨が降るとは珍しいってな。なんだっけ……ゲリラ豪雨とか、そんな感じで呼ばれてるらしい』
「ゲリラ豪雨ね」
本来少数精鋭で撹乱を目的とした戦闘を仕掛ける部隊の意味だった気がするが、奇襲という意味では同じってことか。
電話の向こう側でも会話中にでさえ雷の音がバリバリと入ったり、雷の影響だろう、直接電話の音にノイズが乗ったりする。こりゃこれ以上電話続けていると耳がいかれそうだ。
『同感だ。んじゃ、まあ家で大人しくしているとしますか。またな』
「ん」
それにしてもこの雨、酷いもんだ。今日までにも既に何度かあったが、今日は一段と酷い。まるで水槽とビルの貯水槽と学校のプールを同時にひっくり返した感じだ。
家の扉を開けて外を確認してみたが、排水溝からは水が溢れ出して道まで逆流。ほとんど水浸しだ。
「キョンくん、雨すごいね」
「ああ、そうだな」
同じく休校になっていた妹が心配そうに外を見る。
「今日学校から帰ったら遊びに行こうって言ってたのに、残念」
「また明日行けばいいだろ?」
「明日は明日でまた遊ぶんだもん」
どうやら毎日遊びたいらしい。こっちは毎日でくたびれちまってるけどな。
「じゃあ今日はキョンくんが遊んで」
どう繋がってじゃあ、なのかは分からないが、どこで覚えたのか無理やり俺の部屋に上がり、拒否権も無しに妹とのゲームやなんやに付き合わされた。なんか何処へ行っても、自分の扱いが同じ気がしてきたぞ。これは非常に不服だ。
とはいえ小学生相手にそんなことを言っていたって始まらないし、ハルヒのやつ相手には取り付く島もない。他は別にそこまで扱いは酷くないし。
ってつまるところ俺の待遇は何処行っても変わらないってことじゃねえか。
「キョンくんの番だよ」
向かいに座っている妹がせっつく。ああ、分かった。
こんな感じで昼過ぎまで遊び続けて昼食が終わる頃になると、妹は睡眠モード。うつらうつらしながらテレビの前のソファーで頭をゆらゆらと動かしている。そんなに眠ければ寝ればいいと思うのだが、
「お昼のテレビは普段見れないの」
というなんだか妙な固執の為に、がんばって薄目を開けつつテレビを見ている姿になんとなく微笑みすら浮かべたくなるのだが、そんな中で突然俺の携帯がやおら仕事を始めた。
どうせ着信音も雨と雷の音でかき消されるだろうと、バイブにしておいたのが幸いしたらしい。もしこれが通常の着信音なら聞き逃していた可能性も……無いか。あいつのことだから出るまでずっと鳴らしっぱなしとかにしそうだ。
「どうした」
誰からの着信、なんてのを確認しなくても、こんな状況で電話を掛けてくるやつは1人しか居ない。そしてこのタイミングで電話を掛けてくるということに、一抹どころか多大な不安が押し寄せてくるのは言うまでも無い。
『あんた今何してた?』
「朝から妹の相手だ」
『妹ちゃんと遊んでた、ってこと?』
「そうだ」
『ふーん、まあどうでもいいけど』
なら聞くなよ。
『ところで今暇?』
ほら来た。
「こんな雨の中、外には出んぞ」
『別に外へ出ろとは言わないわよ』
「じゃあなんだ?」
『大分前にメッセンジャーっての入れたでしょ。あれを試してみようと思って』
そういえばそんな話もあったような無かったような。
『パソコン立ち上げて入りなさい。後はそっちで。じゃ』
もう毎度恒例だが、向こうが一方的に用件を告げて切りやがった。全く、「はい」か「いいえ」くらい答えさせろと。「いいえ」と言っても、強制的に「はい」を選ばされるんだろうけどさ。
渋々ながらパソコンの電源を入れた。