聞くきっかけも無いまま、2日過ぎた。どうにか俺もネタ振りをしたいとは思っているし、周りからの目も徐々に穏やかならざるものが含まれ始めているし。どれだけ期待してるんだよと言いたいが、実際俺くらいしかどうしようもないからそうなってしまうのも無理は無いのかもしれない。が、やっぱり重荷過ぎだろう?
 もし考えを改めさせる相手が朝比奈さんみたいな常識が通じる人間なら良かった。あ、いや、朝比奈さんも未来人だからあまり現代の常識が通じないところあるよなあ。じゃあ谷口でいいや。
 あいつは俺と同等くらいにアホではあるが、少なくとも生活に必要最低限な常識くらいは持っている。例えば人から物を借りるときはちゃんと貸してくれと頼んでからにするとか、自分が欲しいからと言って、勝手に他の部活へ乗り込み、挙句の果てに犯罪者に仕立て上げようなんてことはしないとかな。
 けれども相手は涼宮ハルヒという、非常識の塊と言っていい人間である。日本人が躊躇することや、されたら激怒することを片っ端からやっていく。こんな女を相手にまともな話し合いが成り立つわけが無いのは紛れも無い事実。
「いいのよ、あたしが楽しければ」
 こんなのをモットーにしているような人間と係わり合いを持ちたくありません、と言っても無理なんだよなあ、もう今更。やれやれ。
 ダークブルーな俺の気持ちとは別行動で、部室はいつも通りのまったりとした時間が流れていた。
 ハルヒは自前なのか、一見して画面上に逃げ場が無いくらいに弾をばら撒いてくるシューティングゲームに夢中。とはいえコンピ研とのTHE DAY OF SAGITTARIUS Vでの戦いから何も学んでいないのか、特攻好きな為に敵に近づいては自滅を繰り返し、その度に苛立っている様子だった。救いようの無いアホだな。
 古泉と鶴屋さん、朝倉、実希の4人は先に帰った。それぞれやることがあるらしい。もしかすると古泉はこのシューティングゲームのせいで仕事をしに行かなきゃいけなくなっていたりしないだろうかね。
 長門は本を読む置物と化しているし、朝比奈さんは鼻歌を歌いながら俺がお願いしたおかわりのお茶用のお湯が沸くのを待っている。
「あっ、このっ、いけっ」
 本人曰く、コンピ研との戦いからシューティングに目覚めたらしかったが、むしろあれはシューティングゲームというよりはリアルタイムシミュレーションRPGに近いと言った方が正しいし、長門がほとんどカバーしてくれたお陰でどうにかなっただけだ。タイマンで戦って勝てるわけが無いよな、こんな無策突撃娘が。
「また死んだ!」
 肩を怒らせながらコントローラーを握る。そりゃこいつみたいに何でもかんでもボム使ってたらいざというときに使えなくなって当然だ。
 なんだかんだと怒鳴りながらも続けている辺り、やる気はあるようだ。それもどこまで続くか分からないがね。まあ俺の知ったことではない。
「次から次へと、弾も敵も多すぎなのよ。半分くらいに減らせばいいのに!」
「難易度変えられないのか?」
「そういえばそんなのもあったわね。でもこの難易度で始めちゃったからにはこの難易度でクリアしないと気がすまないのよ! ってああまた!」
 弾と散っていった自機を見て、
「星みたいだな」
 気づいたときには口をついて言葉が出ていた。そして言ってからしまった、と思った。
 見ると朝比奈さんも「あ」と言いたげな目をしていて、長門さえも視線を本からこちらに向けていた。すまん、今のはタイミング的に悪かったよな。俺だって言おうと思って言ったわけじゃない。つい口が滑ってだな。って結局言ったのは間違いないじゃないか。
 いや、そんなことはどうでもいい。どうにか火消しをせねば、この世界が崩壊してしまえば今までの苦労も泡沫のようにはじけてしまう。
「あたし思うのよ」
「……ん?」
 言い訳を考えていた俺は、画面を見たまま、しかし話しかけているのは確実にこちらへ向けて話し出したハルヒの声に耳を傾ける。
「星ってたくさんあるわよね、ってことをあんたには前言ったわよね」
「あ、ああ、そうだな」
「でも同じ星って2つと無いはずなのよ」
 どうにもハルヒの言いたいことが分からん。確かに全く同じ星がこの世に存在するとは思えないが、だからなんなんだろう。
 地雷を踏まないようにハルヒが次の言葉を出すまで待つ。
「雑草には雑草なんて名前が無いみたいに、星だって全く同じものが集まってるわけじゃないわ。衛星も惑星も恒星も星ではあるけど、ひっくるめられてる。惑星だけ見たりしたらかなり数は減るはずよね。じゃあなんで星の数ほどなんていうの? おかしいじゃない」
 少なくとも言えるのは、そんなことをいちいち考えるのはお前くらいのもんだってことだな。
 つーかたったそれだけのためにこんな世界を作り出したってか。たまらんな。世界はこいつの気まぐれで星がなくなっちまったんだぜ。正確には見えなくなっただけらしいけどな。
 それでも理由が分かっただけマシか。
 ……いや、肝心なところがまだ分かってない。星というものが集まりが現実的なものでないという結論から、星の存在を消すというところまではいくらなんでも論理の飛躍がありすぎだ。