HARIHI.S>キョン、居るんでしょ?出なさい!
「ハルヒだと?!」
これはマズいんじゃないか?謎の空間へ行ってしまったなんていう、あいつがいかにも飛びつきそうな状況に置かれているんだからな。
HARUHI.S>どうせ面倒だからってサボってるんでしょ。有希とみくるちゃんも一緒って、二人を誑かしたわね。そんなこと許さないわよ!
んなわけないだろうが。
にしても、そういえばこいつは超常現象が起こって欲しいが、理性がそんなもの起こる訳ないとストッパーになっているんだったな。だから本人の周りに何かが起こっていても気づかないと。まあ気づいたら気づいたで、今度は毎日不可思議現象の祭りで頭がおかしくなりそうだが。
とりあえず、俺が打とう。長門、席を変わってくれ。
「分かった」
『こっちもいろいろと用があるんだよ』
HARUHI.S>用って何よ。言いなさい
『えーっとだな』
視線を背後に送る。アイコンタクト結果は以下の通りだ。
朝比奈さん:ふるふる(わ、私に聞かれても困ります!)
長門:………(………)
こっちの長門:?(なんですか?)
こっちの鶴屋さん:あっはっは(まあがんばって考えるっさ)
こっちの俺:じとー(俺に聞くな)
自分で考えるしかない。なんと言い訳するか。
………ええい、これで!
『SON組の仕事だよ。地域と学校の繋がりを深める方法として、市役所だのなんだのに聞きこみをだな』
我ながら非常に苦しい言い訳である。いや、それ以前に学校を2,3週間休んでいるわけだし、そっちの方が問題だよな。まあハルヒが「こんなに学校を休んで!」というフレーズを持ってこなかった辺り、そういう部分は朝倉辺りが情報操作して、手回しは済んでいると考えていいだろう。つまり残す問題はこの事件発生機とも言える涼宮殿に怪しまれないことなんだが…。
HARUHI.S>そんなことやってる暇があったらね、謎な事件の1つでも拾ってきなさい!
特には疑われなかったようで、一安心。
にしても、ハルヒが好みそうな謎事件とは、そこらへんに転がっているものだとは初耳だ。そこらへんに落ちてる石をひっくり返したら、その裏に張り付いていたりしないだろうな?
ああ、それよりも、だ。本当の向こうの状況は元に戻っているらしい。あの健気でおとなしいハルヒから、暴れ馬のハルヒに語調からして戻っている。こうなると、やっぱりあのしおらしいハルヒが良かった、と後悔の念が沸きあがってきたりもするが、まあいつもしおらしいと今度は張り合いがなくなるし、俺も望んでいた不思議体験もできなくなるかもしれないんだ。これで良かったのさ。
『善処する』
HARUHI.S>政治家答弁は禁止よ!
お前は政治家以上に都合の良いことしか耳に入らないだろうが。
『しかし、そういう不思議現象はお前自身が見つけてこなきゃおもしろくないんじゃないのか?俺が体験したのを話したところで、まず信じないだろうしな』
HARUHI.S>見つけたらそのままにして、あたしを呼びに来ればいいじゃない
殺人現場かよ。
…もしかすると、もしかするとだ。ふと、思いついた。
『もしだ、俺達がどこか…そうだな、業務用の冷凍庫に閉じ込められいたとしたらどうすればいいと思う』
HARUHI.S>何それ。心理テストか何か?まあいいわ。そういうときって、どこかに脱出用スイッチとかがあるものだし、それ押せばいいじゃない
『脱出用スイッチ?』
HARUHI.S>食料品店とかにある業務用の冷凍庫のことでしょ?ああいうのって中に閉じ込められたときのために、非常用のボタンがあるもんなのよ
それは知らなかったな。
HARUHI.S>大体扉の近くにあるものだし、それを押すわ
「あ」
元の世界の長門が突然呟いた。それはさしもの無表情娘も驚いた、といった様子。どうなったのか説明してくれ。
「空間情報の修正が行なわれた」
空間情報の修正?
「もしかして、こっちの世界に涼宮さんの力で何かができたんですか?」
俺達の世界の朝比奈さんの問いに「そう」と首肯するこれまた俺達の世界の長門。何かって何だ?
「今の話からして、脱出用ボタンとか…」
もう一度首肯。
HARUHI.S>とにかく!さっさと帰って来なさい!
あまり期待はしてなかった手段だったが、ハルヒの力とやらは随分強力なんだな。まあだからあれだけの人間を、強制的にだが、集められる訳だ。
『分かった。ありがとうな』
HARUHI.S>何で感謝されたかは知らないけど、感謝するくらいなら最初から手間をかけさせないようにしなさいよね!
『善処する』
HARUHI.S>だからそれは禁止って言ってるでしょ!
「…探そう、そのボタンを」
元の世界のメンバーである俺、長門、朝比奈さんは顔を合わせ、大きく首を縦に。こっちの世界の人間は何があったか細かくは理解できていないみたいだったが、ボタンを探せばいいという話だけは理解できた様子で、手伝ってくれるらしい。
こういうとき、こっちの人間がいいヤツで良かったと深く思う。よし、手分けしてそのボタンとやらを探そう。