さて、SON組発足から数日。既にいろいろあって、思い出したくないこともあるわけだが。
 平日の活動の初日。俺はSOS団のHPにリンクを作り、SON組ページを作成しなさい、との命が超監督様から下った。SOS団のホームページはどうするんだ?
「残すわ」
「でもSOS団はある意味で解散みたいなもんだろ?」
「いいえ、SOS団は不滅よ!SOS団ページは残してとにかくやりなさい」
 とりあえず、言われたとおりSON組のページの作成に着手し始める。しかし、さっそく悩みが。
「何を書けばいいんだ?」
「それは有希に聞きなさい」
 長門、何を書けばいい?
「何でも」
 こっちもこっちで無責任だ。どうにかしてくれ。
「だったら適当に活動日記でも書いておきなさい」
「真面目に書いたら即潰れるぞ、このSON組が」
「そこらへんはほら、適当に濁すのよ」
 無責任な上にいい加減。このSON組にはもうちょっとまともなメンバーは居ないのか。古泉はどうだ?
「そうですね…残念ながら僕にも思いつきません」
 朝比奈さんは?
「ごめんなさい、私も…」
 鶴屋さん…と、朝倉はSOS団のときに活動を共にしてなかったし、内容を考えてくれというのも酷だろう。ってことは詰みじゃないか。
「それに、活動日誌ならHPよりブログだろ」
「ならブログでいいわ」
 結局俺がやることは決定事項なんだな。仕方がない、適当にやるか。作らない、という選択肢は背後の鋭い眼光の団長様によって封印されている。イメージ的にはこうだ。

>涼宮ハルヒの命令だ!
>どうする?

ニア命令に従う
 命令に従う
 命令に従う

 選択肢全部同じかよ!その上逃げ出すという選択肢もないわけだ。なんで俺、こんなことやってるんだろうな。
 とりあえずブログのレンタルを登録の申請、まあ設定はそのままでいいだろう、最初の活動日記を書く。…マジで何を書けばいいんだ。
「あー……すまん。何も考え付かん」
「とにかく何か書きなさい」
 といってもどうしろと。うーむ…組員紹介、は個人情報だから書けないしな。どうしようか。
「ま、まあ、そんなに根を詰めても、きっと何も考え付きませんし。少し休憩しませんか?」
「そうですね、僕もそれに賛成です。そうそう、涼宮さんが前言っていたゲームを探してきたんです」
 学校指定の鞄以外に持ってきたボストンバックから何やら取り出したのは…某有名社の古いハード2つ。未だに残っていたのか、赤と白で コントローラが収納できるものと、灰色でコントローラのボタンがカラフルなもの。…というか、古すぎじゃないか?
「すみません、たまたま手に入ったのがこれくらいでして…」
「十分よ、古泉君。今時のゲームは熱さがないわ、熱さが!これくらいの方がいいのよ!」
 と言ってもだな、ハルヒ。俺たちは後者の方はさておき、前者の世代ではないだろう。ソフト分かるのか?
「自分の身長の高さから落ちると死ぬんでしょ?」
 それはあのゲームだけだ!
「あー、あたしも知ってるさっ。バントでホームラン打てる野球ゲームとかね!」
 それもあれだけです。というか、なんで知ってるんですか!ということが言える俺も何故知ってるんだ。
「とりあえず、ソフトはいろいろ持ってきたのでお気に入りのものをどうぞ」
 バッグにはファ…いや、某ハード2つのソフトが乱雑に入れてある。随分数があるな。
「そうね……これやりましょ!」
 バッグを漁り始め、数分でハルヒが取り出したソフトは…灰色の本体の方のソフトで、ダンジョンの中に落ちているアイテムだけでダンジョンをクリアしていくゲームだった。一時期かなり流行ったし、未だに根強いファンが居るゲームだな。説明書は…ないんだな。
「すみません、数は揃えたんですがいかんせん全てのソフトに箱や説明書まで見つけるのは難しかったのですよ」
「大丈夫よ、古泉君。これくらいあたしの勘でどうにかなるわ!」
 ソフトを入れて、電源オン。コントローラを握っているのはもちろんハルヒだ。キャラクター名、
「キョンでいいわよね」
 ああとも嫌とも言う前に決定する。何にせよ最初から拒否権はないわけだが。
 最初のダンジョンに入ったハルヒ…じゃないゲームのキョンだ。
「さてと、何すればいいの?」
「とりあえず敵を倒してレベルを上げながら、そこらへんに落ちてるアイテムを拾いながら進むんだ」
「最初の方は、ゲーム内でアイテムの使い方などを説明してくれますので、それを見ながらやればいいと思いますよ」
 という古泉の言葉を聞かずにスキップしまくるハルヒ。おいおい、大丈夫なのか?次の部屋に進むと最初の敵が。
「殴ればいいのよ、殴れば!」
 何も装備せずに殴り始めるハルヒ。せっかくさっき武器も防具も拾ったんだから装備しないと……と言ってるうちに敵は消滅した。
「何、楽勝じゃない!ガンガンいくわよ!」
 だんだん階層を重ねるごとに敵が強くなっていくのだが、ハルヒはちっともレベル上げもしない上、武器や防具の装備も最初の方に拾ったものを途中で一度装備した後、全部拾いもせずにどんどん進む。おい、さすがに危険だぞ、と言った瞬間大きな音がした。ゲーム上のキョンが地雷を踏んだようだ。
「何よこれ」
「ダンジョンの中にはトラップが仕掛けてあったりするんです。ひっかからないためには罠が見えるアイテムや武器を振って調べます」
「面倒ね…」
 と一つ階下に潜ると、周りに敵がうようよ居た。なんだこれは。
「モンスターハウスなどと呼ばれるもので、部屋中にトラップや敵を配置したものですね。ランダムで発生するのでいつどこでできるのかは分かりません」
「面倒ね、突っ切るわ!」
 幸いにも階段がすぐ傍にあったため、ゲーム上のキョンは階段を下りる。全く、こんな無茶してここまで来れるとは運がいいな。しばらく行くと、新たな武器を拾った。
「それは壁を掘ることができる装備ですね。しかし、使っているとたまに壊れることがあります」
「ふーん、壁をね。おもしろそうじゃない!」
 即装着。壁堀りを開始する。滅茶苦茶に掘りまくると、なんだ、アイテムが随分固まって置いてある場所に出た。さっきのモンスターハウスか?
「いえ、これはこのゲームでの店、ですね。アイテムを拾って店長に話しかけ、お金を払うんです」
 それを聞いていたハルヒはアイテムを片っ端から拾っていく。おいおい、金が足りないぞ。本来の通路はアイテムを拾った瞬間に封鎖されたぞ。
「何言ってるのよ。さっき開けた穴から逃げるのよ!」
 それは泥棒だ!と言おうと思った瞬間に画面に”泥棒!”と表示された。ほら、やっぱりな。
「ちっ、ばれたわね。いいわ、相手になってあげようじゃないの!」
 店長が近づく。ハルヒがゲーム上のキョンを使って攻撃をする。
 キョンの攻撃!
 ミス!
 店長の攻撃!
 キョンは倒れた
「あーもう、何やってるのよ!」
 何やってるの、はお前だ。泥棒なんかしようとするからだ。
「ばれないかなーとか思ってたのよ。つまんないわ!」
 と、横からぬっと出てくる顔。なんだ長門、お前もやりたいのか?
「……」
 首肯する。ハルヒは長門にコントローラを渡す。ゲームを開始するが…なんというか、ハルヒ以上に下手だ。アイテムを片っ端から拾っては装備する、を繰り返すのだが…長門、防具は防御力だけではなくて特殊能力とかも見ろよ。
「……分かった」
 そう言いながら、トラップを踏みまくる、敵に突っ込む。ハルヒより浅い階層で同じくゲーム上の俺は倒れこんだ。
「……」
「有希もだめ、か。このゲーム、不良品なんじゃないの?」
 そんなわけあるか!
「まあ、時間も時間だしそろそろ今日は解散しましょ」
 ハルヒの声でそれぞれ荷物をまとめる…が。
「どうした長門。まだやるのか?」
「……」
「何、有希、まだやりたいの?ならしばらく家に持って帰ってやる?」
「……」
 こくんと首を縦に。結局その日から2,3日は灰色の本体は長門の家に持って帰られることになった。
「あ、なら私はこのゲームを持っていくわね」
 隣に住んでいる朝倉は何やらグロテスクなラベルのゲームを…、なんというか、なんと言うべきだろう。
「あら、何か言いたそうね?」
 滅相もない。

 数日後の話である。
 部室にあの本体が戻ってきている。俺が来ると長門は電源をつけ、なるほど、どこまで行ったとかいうランキングが出るわけだな。それを俺に見せるが…なんというか。
 長門はあの後やりこみすぎて、評価点がカウントストップしていた。
「ソフト自体の改変などは行なっていない。すべてゲーム内の規定でクリアさせた」
 その後に俺を見た視線は「褒めて!撫でて!」と尻尾を振っている犬のように…見えたのは俺の気のせいだっただろうか。