いつものSON組の集合が終了し、帰宅。飯を食った後、居間でテレビを見ながらのこと。
「キョンくん、キョンくん」
最近人気らしいバラエティ番組を見ながら、横目でソファの隣に座っている妹を確認する。何か用か?
「何かさがしてほしいものない?」
突拍子もないことを言うのはハルヒだけで十分だ。
「ねーねー、キョンくん。さがしてほしいものあるよね?」
「特に何もない」
「そんなこと言わないで、何かないー?」
「無いと言ったら無い」
「うー、キョンくん、いじわるだ」
いじわるというか、この場合はしょうがないと思うぞ。
しかし、ずっと横でふくれっ面をされているとどうにも居心地が悪い。そうだな、じゃあ俺が1年前に失くしたシャーペンを探してきてくれ。
「もっと大きいじけんをかいけつするんだから!」
いや、まずなんで突然そんなことを言い出すんだ。
「学校でね、私がシャーペンのある場所を見つけたんだよー!」
どういうこっちゃ。
「お友だちにね、シャーペンをなくしちゃった子が居て、その子のお話からシャーペンを見つけたの!」
そりゃお手柄だな。
「でしょでしょ!でね、名探ていはもっといろんな事件を解決するの!」
この発言、まんまハルヒだぜ。俺にまとわりついて「事件、事件」。俺は家でも学校でも奇天烈と隣り合わせでなくてはならないのか。やめてくれ、俺は平穏で居たいんだ。
もし、この場に居たらハルヒが即聞きつけ、「さあ、一緒に事件を探しに行きましょう!」とか高らかに宣言し、頭痛の種を撒くだけではなく、大量に水をやり、煌々と照明を当ててやるようなことを平気でやりかねない。居なくて良かった。
部屋に戻っても、
「ねーねー」
布団の上で長門から借りた分厚い本を読んでいるが、なかなか諦める様子がない。シャミと遊んでなさい。ほら、そこに―。
む、シャミは何処行った?
基本的にシャミは俺の部屋から出ることは少ない。連れて行くとしたら、ここでまとわりついているこいつが勝手に連れて行くってところだろうが、
「シャミはどうしたんだ?」
「しらなーい」
知らないらしい。変だな。
「シャミ〜?」
机の下、ベッドの下…隠れられそうな場所を二人で探すが、何処を探しても見つからない。どういうことだろうね、これは。
「ねえねえ、キョンくん!これってじけんだよね?ね?」
ああ、そういうことにしておこう。
本当はただの気まぐれで、部屋の外になんとなく出たくなって出たんじゃないかと思うんだが、事件だということにしておいたら、嬉々としてシャミ探しに精を出すだろうから、相手をする必要もなくなるだろうし、ふくれっ面を眺める必要もなくなるだろう。一石二鳥じゃないか。
「じゃあ、がんばってシャミを探してくれ」
「うん!」
さて、これでしばらくはのんびりできるぞ。
どれくらい経っただろうか。文字の海に眠気を誘われ、ベッドでいつのまにか惰眠を貪っていた俺は、小さな手に体を揺すられて目を覚ました。ん…、なんだ。
「ねえ…キョンくん。シャミが居ないの」
「んあ?ちゃんと全部探したのか?」
目をこすりながらそう尋ねると、大きく頷いた。
「シャミ、どこ行ったのかな…」
「ま、その内出てくるさ。お前ももう寝なさい」
見ると、あと半時もせずに時計の針は仲良く上を向く頃合になっていた。さすがにこれ以上起きているのは体に良くないぞ。…きっと。
「でも、シャミが」
「シャミならすぐに出てくるさ。早く寝ないと明日の朝起きられないぞ」
「うん…」
納得いかない様子でしばらくためらっていたが、その内しぶしぶと俺の部屋を出て、「おやすみなさい」と扉を閉める。ああ、おやすみ。
俺もパジャマに着替え、布団の中に入る。どうせどこかここより暖かい所を見つけて、そこで丸くなってるんだろうよ。意外にリビングのテレビの裏とか狙い目だろう。埃っぽいが、温度だけは申し分ないだろうからな。
そんなことを思いながら目を瞑ると、まだまだ寝たりなかったんだろう、すぐに眠気がやってきてそのまま意識が薄れた。