今日は、というべきか今日も、というべきか。とにかく部室は平和だった。
 長門の家で録画されたらしいケーブル放送のテレビ番組が入ったDVDを流しっぱなしでハルヒは時間を潰しているようだし、長門と実希はいつも通り本を開き、朝比奈さんは編み物をしながら、朝倉と鶴屋さんはテレビニュースを見て、俺と古泉がオセロ。世の中の不思議を探す為にできた部活とは到底思えないようなお遊び集団である。
 これを俺はまあそれなりに気に入っていた。
「はい、今日は中国茶に挑戦してみました」
「ありがとうございます」
 さほど強くない古泉とゲームをしながら、朝比奈さんの淹れてくれたお茶を飲んで。完全なルーチンワークと言っていいこの状況。昨日の夕飯は何だったかと思い出すにも、毎日似たような生活をしていては一苦労である。
 そうするとやっぱりこんな状況を好ましくないと思う人間が居て、それは総じて声の大きい人間である。
「あー、つまらないわ」
 DVDを全部見終わったらしく、ノートパソコンの電源を落としてから机に突っ伏すハルヒ。
「本はどうした」
「全部読み終わったわよ。それに今は活字を追うとかビデオを見るとかじゃなくて、もっと体を動かしたいわ」
 めっきり冷え込んだ為に外に出たくないのだが、元気の塊と表現して差し支えないハルヒはこんなときに外でサッカーでもやろうという案を出しやがった。何を言ってるんだと思ったが、サッカー部がまだグラウンドを使っていて、さすがに野球部のときみたいに追い出そうとするのは駄目だと言おうとして、図ったかのように雨が降ってきたから中止となった。ナイスタイミング。傘持って来てないけどな。
「体育館も空いてないだろうし。どこかにこういうとき、遊べる施設ってないのかしら」
「市の体育館とか。利用するためには予約っていうかそのときに登録が必要だったと思うけど」
「駄目ね。遠すぎるもの」
 ここから自転車で向かうと数十分掛かるから遠いといえば遠い。帰り道とは方向も違うから帰る時間と労力を考慮すると少し厳しいものがあるよな。そうそう、全員が自転車で学校まで来ているわけでもないし、1度駐輪場まで自転車を取りに行かなきゃいけないってのも考えものだ。
 もしかすると頼めば新川さん辺りに頼めばマイクロバスか何かに乗せてくれるかもしれないが、ただ遊びに行くだけでそんなことを頼むってのも非常識だ。今回1回だけならまだしも、遊びに行くときに毎回となることになりそうだからさらに厚かましいことこの上なくなる。
「前に出来た時間制のゲームセンターのところにはバッティングセンターとかいろいろあったと思いますよ」
「それはいいけどお金掛かるから長時間遊べないのよね」
 時間制でそれなりに値段が安いとはいえ2時間半と遊べば1000円くらいにはなるところがほとんど。となると遊ぶのにはなかなかお金が必要になる。冬の空みたいに冷え切った懐ではそう頻繁に行くこともできまい。
 となると遊ぶことができる場所って結構限られているんだなと気づく。近場の公園なんかは子供たちが遊んでいるし、サッカーをやるにも野球をやるにも狭い。
「やっぱり学校内で遊ぶしかないわね」
「何をする気だ」
 古泉の黒い駒を白くしながらハルヒを冷ややかな目で見る。既にかくれんぼはやったことがあるし、再度とは考えにくい。鬼ごっこはいろいろと問題だよなあ。下校中の生徒はもうほとんど居ないとはいえ、廊下を走ったり大声出したりと迷惑千万だったらそれなりの処分を覚悟しなければならないと言える。
「既に決めてたらこんな悩まないわよ。何か案ない? 体動かせて広い範囲使わなくていいやつ」
「そういえば割と新しいゲームハードにそういう体を動かすタイプのものって出ていた気がするのですが」
「ゲームね」
 昔はダンスゲームとかあったっけ。上とか下から出てくる矢印の方向にキーを入力するやつ。あれもゲームコントローラーでやれば全く運動にはなりゃしないが、専用のマット型コントローラーが出ていたはずだし、あれくらいなら運動もできてスペースもやたら広く取ることもない。
「ふうん。中古ゲーム店とかにもあるのかしら」
「俺が言ってる方なら、ソフトは一時期結構流行ったから安く手に入るんじゃないか? ハードもそこの黒いやつだしな。問題はマットの方が未だに残っているかが問題だが」
「僕の方はゲームハードが結構値段がしますし、その購入がネックですね」
「じゃあちょっと行ってくるわ」
 行ってくるって?
 そんな疑問を疑問としてぶつける前にさっさと教室を出て行ったハルヒ。まさか今から買いに行くのか? そこまでしたくなるくらい運動したかったのか。別に構わないがさ。
 数十分後にはマットタイプのコントローラーを2つ、ソフトを3種も買ってきていたハルヒの下でダンスパーティーが開かれていた。1番上手かったのは長門だったということにもう驚きもしない。