「ただいまー!」
「おじゃまします」
ぞろぞろと家に入るSON組メンバー。おい、俺より先に入るってどういうことだ。って、誰も聞いてねぇし!
「キョンくんのおへやにいこ!」
俺が自分の部屋に着いたときには、既にハルヒが俺の部屋を片っ端から漁り始めていた。こら、勝手に人のものをいじるんじゃない。
「何よ、組員が健全な生活をしているか確認するのは、顧問の仕事よ」
それ以上にプライベートの侵害だろう。って、鶴屋さん、その隙に机を漁らないでください。長門、お前も本棚をだな、朝倉はクローゼッ、お前達!
一喝し、中央に全員正座で集合させる。
「何よ、つまらないわね」
つまらなくて結構だ。俺の人権に関わるものだからな、部屋の探索を断固拒否する。
「探索できなかったら、シャミを探せないじゃない」
「そうだよー」
なら俺の監視下で、という制限下にする。勝手な捜索は禁止だ。
不平不満が挙がるのを全部無視し、やっと当初の目的に到達。まあ、既に全部一通り見た訳だが。
「確かに…居ないわね」
「というか、毛もほとんど落ちてないわね」
ハルヒと朝倉がベッドの下を懐中電灯で照らしながら確認する。ほとんどそこには入らないからな。机の引き出し、いやさすがに居たら中国雑技団もびっくりだが、机の下、タンスの中と次々に調べていくが、やはりあの三毛の図体は見つからない。
さあ、名探偵。どうだ、何か痕跡でも見つかったか?
「これだけじゃ分からないわ。他の部屋も探してみましょ」
親の部屋など、入れられない部屋を除き、皆で部屋を探してみる。見る目が増えればもしかして、と思ったりもしたが、やっぱり何も変わらないか。
俺の部屋まで戻ってくるとハルヒは、ふーむと顎に手を当てて、考えるポーズ。
「普段キョンの部屋に居るシャミが突然行方不明。そして、家出する理由が見つからない」
ああ、そうだな。
「これは、誘拐事件ね!」
………。
ハルヒと妹を除く全員が停止した。
「どうやったらその結論に達するのか、俺には全く分からない」
「よく考えてみなさい」
ハルヒの推理が始まった。
「いつもキョンの部屋に居るシャミが居ない。ここまででは自分で出ていったか、事件かの両方で考えなきゃいけないわよね」
確かに、それだけではまだ決めかねる。
「でも、いつも食事はちゃんとあげていた。寝るときだって、布団の上で丸くなってたりしたんでしょ?」
「そうだよー。キョンくんといっしょにねてるの。いつもは、おふとんの上で丸くなってたり」
「食事も暖房も完備されている。自分からここを出て行く必要なんかないじゃない。この部屋に居れば食いっぱぐれることもないわけだし」
唐突に立ち上がり、
「だからよ!ここから出て行く必要がないのに、この部屋に居ないどころじゃなく、この家の中に居ない。つまり、誰かが連れていったとしか考えられないわ!」
「シャミ、ゆうかいされちゃったの?」
俺はため息をつきながら尋ねる。
「もし、そのお前の推理が正しいとする」
「する、じゃなくて正しいのよ!」
「まあそれはいいとしてだ。なんでシャミを連れて行くんだ」
血統書つきとかそういうわけでもないし、大した得にならんだろう。
「きっとあれよ、三毛猫の雄だからよ!」
たったそれだけの理由で盗みに入ったりしないだろう。三毛猫の雄だからといって、大金になるわけでもないしな。
「今時電線なんか盗むようなやつも居るのよ、ありうるかもしれないじゃない」
電線と猫は違いすぎだろ。それに電線はそこそこ金になるらしいし…って何言ってるんだ俺。まあとにかく、電線は置いておこう。
大体、雄であることをどうやって確認するんだよ。
「遠目から見るだけじゃさすがに無理よ。だからシャミがオスだということを確認できた人間、それが犯人よ!」
そんなこと言われてもな。リビングくらいには行くだろうから、セールスマンの一人として入って来たら分からんぞ。
…って、俺まで誘拐されたという方に傾きかけている。いかんいかん、そんなことあるわけないだろうが。
「もしかすると、おにわにはまだ、シャミをゆうかいしたはんにんの足あととかがのこってるかも!」
「そう、それだわ!妹ちゃん、さすがよ!私の助手に欲しいわね。よし、みんな!外に行くわよ!」
立ち上がったハルヒにぞろぞろとついていくメンバー。誘拐で話が進んでいるが、そんな訳、
「嘘ではないかも知れない」
ちょっと待て、長門。どういうことだ。
「言葉の通り」
それだけ言うとさっさと他のメンバーについていく。ホントにシャミが誘拐?馬鹿馬鹿しい。しかし、長門がそう言っているのは非常に信憑性が高い。むむむ…どういうことだ。