「妙だと思うのよ」
「それはいいが、ベッドの上でお菓子を食べるのはやめい」
つーか妹はいいとして、なんでSON組の部員全員が揃ってるんだ。
「あたしが呼んだからに決まってるじゃないの」
「何で呼んだ」
「学校が開いてないから」
まさかこいつはこれからうちを拠点に活動するつもりか? いつも長門の家を何かと利用させてもらっている俺が言うのもなんだが、こっちは一応親も妹も居るんだから勘弁してもらいたい。
話が一向に進みそうにないので、仕方無しに尋ねてやる。
「……それで何が妙なんだ」
「今日の朝に電話掛かってきたでしょ、あんたの家にも」
「誰からだ」
「学校からよ」
やっぱりその話か。
昨日古泉が言っていた嘘疑惑だったが、やはりあれはただの噂だったらしく、まだいつ学校が始まるかは未定だという。噂が広がりに広がりすぎていたので、慌てて火消しに走ったらしい。昨日だけで3人から電話が掛かってきたことを考えると、昨日の内にクラス3分の2以上はあの噂を聞いているだろうと思う。慌てるのも当たり前か。
「誰が知ってるとか知らないとか、そんなことはどうでもいいのよ。問題は誰がこんなことを言ったのかってこと」
「確かに」
何度こうなっても思うが、さすがに9人もこの部屋に集まると狭いな。飲み物とか菓子を持ってくる母親が入れないくらいだ。
「キョンくんたち、まだ学校始まらないの?」
「ああ」
本当に誰がやったんだろうな。何の得もないと思うが、俺たちが気づかない何かがあるんだろうか。
「さらに変なことがあるのよ」
不満そうにベッドに横になって両肘を立て、両手であごを支えながら言う。
「それはなんでしょう?」
「あたしが学校が2月9日には学校が始まるって噂を聞いたのは同じ学校の制服を着てた女子2人で、丁度あたしが学校の前の坂を上ってたところを向こうが下りてきたところだったから、多分学校まで行って聞いたんだと思ったのよ」
真摯な目で尋ねた古泉にハルヒも真顔で言う。
「で、有希たちに手伝ってもらってここに来る前にその生徒を探してもらったのよ」
「……どうやって」
「大分前に友達が消えたとかいう話があったでしょ? そのときにこっそりデータを保管してたのよ。もちろん写真つきでね」
おいおい、なんつーことをしてんだ。
「あたしがやったわけじゃないわよ。こんな生徒が居るか調べられるか聞いたら、有希がそんときに生徒情報を取ってきていざというときの為に残しておいたって言ってただけだし」
ちらりとオレンジジュースをストローで吸い上げている隣の長門を見る。見られていることに気づいた長門は俺を見てからノック式のボールペンみたく頷いた。
「とにかくそれで調べてもらったらあたしが見た生徒が居ないのよ」
「編入してきたとかないのか?」
「そんなことがあったらあたしが見逃してるはずないでしょ」
ごもっとも。
「で、でも……もしかするとたまたま見落としてたとか」
「それはない」
「ひゃう」
即答された長門に驚いて縮こまった朝比奈さん。確かに長門が見落とすなんてことは、横殴りの雨に傘を差して全く濡れずに帰ってくるくらいにありえない気がする。あるとすればハルヒが見間違えたという可能性だが、
「それも無いわよ。ちらっとじゃなくてしっかり見てたもの」
「変な話だねっ」
腕を組んで悩む鶴屋さん。本当ですよ。
「……ん? その前にもう1つおかしいところがあるぞ」
「何がよ」
「お前は制服で学校に向かったのか?」
「んなわけないでしょ。学校にはどうせ入れない――あれ?」
「だろ。学校に入れないんだから制服を着る必要はないのに、なんで制服なんか着てたんだ?」
「言われてみればそうよね」
確かにと朝倉が頷く。
「とにかくおかしいことが多すぎるわ。ということで」
ベッドの上に両手を腰、胸を張ってハルヒは宣言した。
「今日から臨時でこんな嘘を吐いた犯人探しを行います。そしてそのための臨時委員会を設立します。本部はここね」
「駄目だぞ、うちは」
「いいじゃない。どうせあんたの部屋にしか居ないんだから」
「それでも駄目だ」
「えー、あたしはいいと思うよ!」
ハルヒと一緒にベッドの上でごろごろしていた妹が喜んだ声で、諸手を上げて賛成した。おいおい。