洋服屋には落ちていない様子で、店員に尋ねてみたが、こちらも収穫なし。ううむ、ここじゃないか。
 なら、映画館か。それか見終わってから歩いている間に落とした可能性もあるし、イヤリングを二人で探しながら、映画館までの道を歩く。小さいから見つかりにくいのもあるだろうが、地面に落ちていたら見つかりそうだ。さすがに溝に落ちていたら分からないがね。
 結局映画館までの道には落ちていなかった。映画館の受付の女性にイヤリングが落ちていなかったか聞いてみる。
「第1シアターですか?新しい映画が流れていますので、今は中で探し物はできません。終わってから落とし物では……運ばれてきてはいませんね」
 落し物をまとめて置いてある場所を調べてからそう言った。そうですか…。
「あ、でももうすぐ映画も終わりますし、終わったら探しても構いませんよ」
「長門どうする?」
「待つ」
「分かりました。あと10分少々で終わりますので、あちらでお掛けになってお待ちください」
 映画の終了を待つために、促された椅子に座った。言われた10分を少し過ぎた頃に、第1シアターの扉が開いて客が出てくる。5分としない内に客は出払い、受付の女性が「どうぞ」と扉を開けてくれた。
 とりあえず、座っていた辺りを中心に探そう。前から4番目の椅子だったよな。
「私もお手伝いしますね。次の映画までは30分休みがありますので」
 すみません、助かります。
 椅子の隙間や下などくまなく探す。ないか…。
「あった」
 長門の声。見つかったか!
 見つけたのは俺達が座っていた椅子から2つ前の席の足元で、さっきジュースのゴミを拾いにいった時に落としたのかもしれないな。傍に駆け寄ると、確かに長門の耳に今日買ったイヤリングが両方付いていた。
「良かったですね、見つかって」
「助かりました」
 こくりと同意を表す長門。
「いえ、構いませんよ。これもお仕事の一環ですし」
「それとこれが」
「ん?」
 長門が差し出したのは、小さな綺麗な紅色の宝石がついている小さな指輪。これ、長門のか?
「違う」
 確かに、そうだよな。俺の記憶が正しければ、長門はこんなものをつけてきてないはずだ。じゃあ、もしかして一緒に拾ったのか?
「そう」
 婚約指輪だろうか。結婚指輪ならもっとシンプルだしな。でも、それならなおさら困るんじゃないだろうか。
「すみません、とりあえず外に出ましょう。次の映画が始まってしまいますし」
 分かりました。
 外に出ると、既に次の映画を待っている人がかなり居て、こっちをじろじろ見ていたのがちょっと居心地悪い。俺達が出ると、すぐに客がシアター内へ入り、10分ほど経つと映画が始まったらしく、外には俺達だけになった。そうしてから、俺達はもう一度映画館の受付へ。
「これ、渡しておきます」
 長門から渡された指輪を受付に置く。
「あ、はい。受け取っておきますね」
 と言ったすぐ後に。
「すみませんが…」
 70くらいだろうか、少しくたびれた服を着たジーさんが受付にやってきた。
「あ、チケットのご購入ですか?」
「いえ、そうではなくて、落し物を…」
 と言った直後、落し物箱に入れようとした女性の手から、
「そ、それです!」
 指輪をひったくる。その後、慌てて侘びを入れる。「す、すみません」
「構いませんよ。大切なものだったみたいですしね。これはそちらのお嬢さんが拾ってくださったんですよ」
「おお、ありがとうございます」
 今度は長門にぺこぺこと頭を下げる。
「もう亡くなったばあさんとの婚約指輪だったんじゃ。ありがとう」
 じっと長門はそれを見ていて、口を開いた。
「今度は無くさないように」
「分かった。ばあさんにも笑われてしまうからね、本当にありがとう」
 何度もありがとうを繰り返して、去っていった。
「……」
 ジーさんをずっと見つめていた長門は何を考えていたんだろうか。