「どうよ」
 そんな鼻を鳴らしながら言われても返答に困る。
「これ、何?」
 朝倉が呆れた声を出す。そりゃそうだ、どうやったらこんなものを作れるんだ。後ろから他の組員が出てくるが、誰一人として例に漏れず、呆れていた。
 ハルヒが自慢げに示したのは、俺らの誰の身長よりも大きい雪玉。ハルヒが通った後は綺麗に轍みたいなのができていて、ハルヒがどこを通ってきたのかバレバレだぞ。
「ここに来るまでに、途中で雪かきでもした後みたいに山積みになってる雪があったのよ。それを見てたら雪だるまが作りたくなったわけ」
 で、そこからここまで雪玉を転がし続けたわけか。
「そうよ」
 やっぱりこいつはアホだ。
「まあ、予想以上に大きくはなっちゃったけど、これくらいは誤差の範囲よね」
 どうやったらこの大きさが誤差の範囲になるんだろうな。
「そう、そんなことはどうでもいいの」
 いいのかよ。いや、こっちは全然良くないが。こんなもの家の前に置かれた日には、俺がこれを作ったのかと勘違いされるだろう。
「何よ、別に雪に泥棒とかないんだからいいじゃない。で、これ作っててこれだ!ってひらめいたのよ」
 いやな予感しかしないな、お前の閃きは。
「今から1人1つ、雪で何かを作りなさい。ただし!普通のものじゃ許さないわ。何か不思議なもの、目新しいものじゃなきゃだめよ」
 なんというか、予感通りだ。この雪だるまを見た瞬間から、絶対にこいつは何かやらかすぞという目をしていたし、願った通りに降った雪を目の前にして何もしない訳がない。
 そしてハルヒの思考からすると、ただ雪だるまを作るだけで満足するはずがないし、最終的に「何か不思議なものを雪で作る」という結論に至るには、この涼宮ハルヒという女に数ヶ月しか付き合わされていない俺にでも、容易に出せる結論だ。
「さあ、作るわよ!」
 俺は寒いから部屋で、
「作・る・わ・よ」
 耳をひっぱるな、耳を、耳を!
 結局全員参加は免れず、丁度展覧会の主催者から注意事項等説明の最中に帰ってきた妹も含め、8人それぞれの雪の創作品がSON組展覧会に出展予定になった。ちなみに、さっきのハルヒの行動を見れば分かると思うが、もちろん出品拒否は無理である。次そんなこと言ったら、雪の中に入れられてリアル雪だるまにされるな。
「相変わらずですね、涼宮さんは」
「ああ」
 こうなることを見越してか、はたまた寒かったからかは分からないが、全員手袋を持参済み。それぞれ製作用の雪を集めに散り散りになった、その直後に古泉が話かけてくる。
「あなたから涼宮さんに、この雪を止めるように頼んでもらえませんか?」
「心配するほどじゃないだろうよ」
 ハルヒのことだ。自分が飽きたらすぐに元に戻るだろうさ。それに、お前の所属してる機関とやらは、ハルヒが好きなようにするんじゃなかったのか?
「もちろん、涼宮さんが望む通り、機嫌をなるべく損ねないように行動しています。しかし、最近は機関の上の方達も最近の行動に対して、今までみたいに何でも好きなようにするのは間違っているんじゃないかという意見も出てきまして」
 そりゃそうだ。あいつの好きなようにさせてたら、世界中が似非ファンタジーになっちまう。かといって、機嫌を損ねても世界が崩壊するって、やじろべえ状態だな。どっちかに傾きすぎてもいけないって状況がそっくりだ。
 まあ逆に言うなら、このゆらゆらした状況のままだったら、なんだかんだで平穏なんだ。
「どちらにしても、結局は俺がどうにかしなきゃいけないんだろう」
「ええ、そういうことです。期待していますよ」
 いつもの笑顔を残して、自分の雪を集めにいく。もう今更だ。
 主催者が満足しそうな雪像を構想しながら歩いていると、
「キョンくん、キョンくん。ほら、雪、雪だよ!」
 そんなもの分かってる。
「えへへ」
 何がしたいんだ。
「こっち!」
 連れてこられた公園で、妹は雪が敷き詰められた雪の上で大の字になっていた。その隣で朝比奈さんが同様に大の字。
「あ、キョン君」
 上体を起こして、少し困ったような笑顔の朝比奈さんが出迎えてくれる。どうしたんですか、これ。
「お空からふってくる雪をね、見てるの」
「立ったまま見ればいいだろう。ベンチに座ってもいい。雪の上で大の字になる必要性はどこにある」
「キョンくんもやったらおもしろさが分かるよ!」
 正直分かる気はない。
「みくるちゃん、妹ちゃん。何してるの」
 唐突に背後から現れたハルヒ。朝比奈さんがびくっとして飛び起きる。
「あたし達は創作活動に勤しまなきゃいけないのよ。それを何休憩してるの。さっさと作ってきなさい!それとももうできたとか言うんじゃないわよね?」
「あ、あの…まだ」
「今度休憩してたら、この雪の中、町内一周ピンポンダッシュの刑に処するわ、いいわね!」
「ひゃ、ひゃい!」
「はぁい!」
 ものすごい低レベルな刑だな。
 二人は服に付いた雪を払って立ち上がり、公園の一角で仲良く雪をかき集めて座りこみ、何かを作り始めた。
「キョン、あんたもさっさと始めなさい」
 分かったよ。さて、どこから雪を…って。
 目の前を通り過ぎる雪玉と、それを押し続ける小柄な少女。
「長門、それはなんだ」
「雪玉」
「それは見れば分かる。その大きさはなんだ」
 ハルヒの玉を凌ぐ大きさ。どこに置くんだ、そんなもの。
「大丈夫」
 何が大丈夫なのか。
「負けない」
 おい、誰か長門に教えてやれ。これはハルヒより大きい雪玉を作るゲームじゃないってことを!